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「慣性円運動流」から、琵琶湖北湖のブラックバスやウィードの生態を推察してみよう

「慣性円運動流」から、琵琶湖北湖のブラックバスやウィードの生態を推察してみよう

「慣性円運動流」。聞きなれないことばに、少々おっかなびっくりクリックしてくれたかもしれない。でも、琵琶湖沖合の表層から、夏はサーモクラインが発生するくらいの深さまで、この水流が支配している。これを切り口に、バスやウィードの生態を推察することができるのだ。

「慣性円運動流」ってなに?

「コリオリの力」は知っているだろうか。地球の自転により北半球では左回りのねじりの加速度が常に加わっている。たとえば、風呂の水栓を抜くと水は左回りの渦を描いて下水に吸い込まれていく。あれである。琵琶湖のような大きく深い湖では、このコリオリの力により慣性円運動流が発生する。滋賀県琵琶湖研究所の報告によると、この水流には以下のような特徴があるようだ。

  • 周期的な流れである
  • 風をきっかけに流れが発生し、コリオリの力によって維持される
  • 琵琶湖では北湖に出現する
  • 沖合の表層では1年中、この水流が支配的である。
  • 夏はサーモクラインができるくらいの深さまで、支配的である。

(出典:※2岡本 1987)

本当にこんな流れあるのだろうか?
琵琶湖北湖で、漂流ブイの位置をレーダーにより追跡した研究がある。図1(※1)を見てみよう。

図1

これによると北湖では2、3日で左回りに湖を1週する水流(第1環流と呼ぶ)が発生し、その流速は1秒あたり10~30cmに達する。魚類や植物の生態を考えるにあたり、決して無視できるほど遅い流速ではないだろう。
さらに図2(※1)には、いわば第1環流の反流として発生する第2環流が、北湖南側に存在することを示している。これは明神崎沖で西から東に流れる水流に引っ張られるように発生すると考えられる。第2環流もまた、2,3日で湖を1周する。

図2

北湖では明神崎を境界にして左右の回転方向に、ダイナミックな水流があることは覚えておいた方がよさそうだ。ただし慣性円運動流は沿岸部では支配的ではないので、その点ご注意を。

もう一つ、遠藤によると、この慣性円運動流は日本では琵琶湖にしか見られないであろうとコメントしている。コリオリの力が支配的に作用するには、十分な大きさと深さが必要であることからの推察である。とは言うものの、猪苗代湖や池田湖のような広い、あるいは深い湖ではちょっと気にとめておいた方がいいかもしれない。

慣性円運動流が生態系に与える影響

ここからは、今まで見てきた慣性円運動流の特徴を考慮して、実際にバスフィッシングの戦略を立てていこう。

①湖の中の川のような流れ

まず慣性円運動流は1年を通して定常的に発生していることに注目。いわば流れのない湖に川のような流れが存在することになる。とすると、岬や島、あるいはワンドに対してのアプローチの方向性がはっきりしてくる。たとえば多景島。北湖北側の多景島には左回りの水流が絶えず南から当たっている。ここから推測するに、島の南側は水流により岩場が多く、北側には砂、泥が堆積しているのではないだろうか。

あとはその日その時の状況により、ドン深の岩場がいいのか、土のシャローがいいのかを考えていけばいい。

②風がなくても水流は維持されている

風の全くない日でも、慣性円運動流は表層から中層まで支配的に流れていることを覚えておこう。すると沖合のストラクチャー、ホールや水中島へのアプローチ方向もおのずと決まってくる。特にディープの釣りでは結構、キーポイントになると思うよ。たとえば犬上川沖に水中島を見つけたとしよう。ここは第1、第2環流が合流して対岸側から南西に流れが絶えない。とすると、バスは水中島の南西側に東北を向いてサスペンドしている確率が高い。それが分かれば船の位置、キャストの方向で余計なプレッシャーをバスに与えることのないようなアプローチ法がとれる。

③ウィードが生えるには流れが必要

植生に与える影響も考えてみよう。ウィードの育成には十分な日照と、適度な水流が必要となる。その点から言えば、慣性円運動流の作用はウィード育成にちょうどよい水流を与えていると考えられ、この流れの当たるエリアにウィードが育っていると推測される。

以上が琵琶湖の慣性円運動流を切り口に推察した湖心エリアのバスと植物の生態である。違ってる?そうかもしれない。だがバスフィッシングは自らの仮説を実釣で証明していく処にこそ魅力がある。それを繰り返していけば、初めて出かける湖で思わぬ幸運に巡り合えるかもしれない。

参考文献

※1 遠藤、最近の測流結果からみた琵琶湖の流況、地質学論集第36号 1990
※2 岡本、湖内の水平循環レビュー、滋賀県琵琶湖研究所研究報告、86-A04,1987

書いた人

芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。理系大学を出て、某メーカーでの30数年のキャリアの間に出願した特許はざっと100件。理屈ばかりにやたらうるさい技術者がバス釣りにはまった。自然の中に身を置く快感、極上の思考ゲーム、テクニックとツールの融合、緊張感とリラックスの混在・・・。こんな遊びは他にない。釣りの中でも特別だ。そしてたどり着いたのがSmart Fishingという楽しみ方。あなたにもぜひそのおもしろさを感じてほしい。

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