筆者が釣り日誌・釣りノートを書くいくつかの理由とホントの理由(後編)

筆者が釣り日誌・釣りノートを書くいくつかの理由とホントの理由(後編)

<編集部より>このコラムの著者、山田Uさんは、関東在住のおじさんバサー(笑)。
弊社社長が山田さんと銀座ルノアールでだべっていたところ、山田さんの釣りノートに興味がわき、執筆を依頼した次第です。
山田さんのお仕事は、アカデミックな知識を要求される分野。その経験を活かした、バス釣りが上達するノートの話・後編をお届けします。

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筆者が釣り日誌・釣りノートを書くいくつかの理由とホントの理由(前編)

釣り日誌・釣りノートを書くべき理由その2 敏感になる

記録を残す前提でいれば、周囲のモノゴトに敏感になります。観察眼は鋭くなり、重要なことに気づきやすくなります。少なくとも、筆者の経験則的にはそのように言えます。

上記のネコリグの例で言えば、そもそも記録を残すつもりでなかったら、何節目か数えず、テキトウに「この辺」と刺していたと思います。それでは再現性がありません。記録を残す前提なら、何節目かを数えないわけにはいきません。これと同じようなことが、例えば水位や水の色や釣れたバスの状態や……、多くのことについて言えるのではないでしょうか。

学術的な知見を引き合いに出すとすれば、「フィールドノーツ」が挙げられると思います。社会学や民俗学の世界では、研究者がその土地の生活の中に飛び込んで、起こったこと、起こらなかったこと等々を記録していきます。この記録を、フィールドノーツと呼びます(ノートとも。単数形だと、単なる1冊のノートブックを指すことになり、斯界ではノーツとすることが多いようです)。これを元に、論文なり著作なりが形作られるわけです。

このフィールドノーツについては、分厚い本が出版されるほどのテーマなのですが、中でも「定番」であるロバート・エマーソン他著『方法としてのフィールドノート―現地取材から物語作成まで』では、以下のように力強く宣言されています。

実地研修を受けている学生は、フィールドノーツを書くことによって、出来事をより詳細かつ系統的に観察し、日常的な出来事とドラマチックな出来事の双方に注意を払い、そして、他人の活動や関心に対して自分の活動や関心に対するのと同じくらいに注意を払うようになるだろう。

方法としてのフィールドノート―現地取材から物語作成まで p.18

個人的には、上記の「出来事」を「釣りのフィールド」とし、「他人」を「バス」に置き換えても、まったく違和感のないことば、と感じます。

何かを探求・解明しようとする研究者が書くフィールドノーツと、釣り人が書く釣り日誌。これは本質的に同じモノだと、筆者には思われます。記録を残すことは、「釣る」を追求するアングラーにとって、観察眼を鋭くするひとつの方法だと言えるのではないでしょうか。

釣り日誌・釣りノートを書くべき理由その3 結果的に深まる、上達する

具体的なデータが集まることで、経験の濃度や思考が深まり、アイデアが生まれ、結果として「上達」する。そう考えています。

これは少々曖昧な話になってしまいます。というのも、脳や思考やアイデアというテーマは、最先端の科学でも、未だ解明されきっていない分野だからです。ゆえに、確かなことはあまり書けません。

しかし、遊びでも仕事でも勉強でも、その対象に飛び込んで、記憶し、何かに気づくことで、少しずつだとしても習熟していった経験は、誰もがお持ちなのではないでしょうか。これまで述べてきたように、ノートはそのプロセスを手助けしてくれます。

また、科学者の「実験ノート」という存在も、筆者が「ノートをとることで上達する」と考える理由です。

真理を求める科学者は、多くの場合、実験をベースにして考えます。そして実験にあたっては、必ず実験ノートが残されます。実験結果だけでなく、実験者の思考過程や仮説、ひらめき、各種のアイデア、振り返り、反省……等々も書き込まれます。

科学と同じように、釣りにも、実験の要素が多分に含まれているのではないでしょうか。「あの岬はどうなんだろう」「このルアーをこう使ったらいいんじゃないか」等々、ひらめいた仮説を持って、実際に試してみる。結果を吟味する。振り返って次に繋げる。これは本質的に科学的追求のプロセスと同じです。

科学は、厳密な再現性が求められる世界ではありますが、釣りの世界でも、より確かな「釣れる」を見いだすために、あるいはマーケティングや何の裏付けも無い「釣ったった」情報に踊らされないために、そしてなにより「上達」するために、こうした考え方が役に立つ、と考えています。

いや、しかし、本当の理由は……

……少々理屈っぽくなってしまいました。

実を言えば、筆者は、上記のような理由を意識していません。あえて明確にしようとすればこうなる、ということです。

普段、釣りノートを書くときの動機は、ごくごく単純に、「楽しいから」です(また、釣りの腕もたいしたことはありません。経験不足 :-0 )。

休日の1日をふんわりと釣りに費やして、ただ「釣れた〜orデコった……」と一喜一憂して、仲間とワイワイしたりするのももちろん釣りの楽しみです。誰かの言葉やマーケティング、最新の新機軸ルアーに遊ばされるのも、楽しいことです。

とはいえ、もうちょっと自分のアタマで考えてみると、より楽しいんじゃないか。多少デキが悪いところがある自分のアタマでも、何か他の人が気づいていない、スーパーシークレットに気づいてウハウハできるのではないか。そんな思考・試行錯誤の土台・基盤・作業場になるのが、釣り日誌・釣りノートなんじゃないか。そんなふうに考えて、楽しみながら、楽しいから、ノートを書いています。

本記事にお付き合いいただいて、もしご興味が沸いたなら、何か書いてみてください。損はしないと思います。
そして、「いやいやそれは違う、コレがノートをつける理由だorノートなんていらん!」という方がいらっしゃったら、ぜひTwitterでコメントをお寄せください!

付記

このほかにも、ノートを書くことについて、何かに上達することについて、参考になりそうな情報があります。もしご興味があれば。

▼『「こつ」と「スランプ」の研究 身体知の認知科学』諏訪 正樹
https://www.amazon.co.jp/dp/4062586282
何かに習熟することについて、認知科学の面から解説したものです。そのプロセスにおいて、たとえスポーツのような行動でも、「言語化」「ことばにする」ことが重要だと説いています。

▼『アイデア大全――創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール』
https://www.amazon.co.jp/dp/4894517450/
「エジソンノート」の項では、膨大なメモを残したエジソンの、発明のプロセスが解説されています。

▼『上達の法則―効率のよい努力を科学する』岡本 浩一
https://www.amazon.co.jp/dp/4569621988/
趣味などに上達するための効率的な方法を、科学的視点で解説したものです。ノートをとることも、基本的な手法のひとつとして解説されています。

▼小森 嗣彦さん | カクヒト | キャンパスノート スペシャルサイト | コクヨ ステーショナリー
http://39campus.jp/kakuhito_07.html
バスプロ・小森 嗣彦さんのノート論。

<編集部より>

後日、この記事を読んでくださった方のために、

実際にスマホアプリを使って釣りノートをつける際のコツを伝授してくれました!

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書いた人

山田 U
東京在住オジさんバサー。釣りは6歳から。でも下手の横好き。バスは河口湖育ち、現在のホームは霞ヶ浦、北浦。CCRを聞きながら水郷へ向かうのが好き。フェイバリットルアーはビッグバド。

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