夏に向かう北浦のサーモクラインと底層水流

夏に向かう北浦のサーモクラインと底層水流

日本最大の湖:琵琶湖をめぐる水流については、前回、前々回で詳しく紹介した。
では他の湖ではどうなのか。今回は関東のメジャーレイク、北浦について掘り下げてみよう。初夏から真夏に向かう湖がどう変貌するのか、それをどう攻略すればよいか、ヒントが掴めるはずだ。

浅い北浦のサーモクラインとターンオーバーは琵琶湖とはちょっと違う

北澤らは、琵琶湖で行われた解析と同様の方法により、北浦の流動場、密度場を3次元解析した。図1に北浦の格子分割方法を示す。湖を水平方向に500m、鉛直方向に50cmの格子で分割し、各格子において、流速と圧力、密度を変数としてシミュレーションを行った。

図1(※1より引用)

図2に2006年6月20日~9月30日の江川沖(水深約7m)の水温観測値と計算結果との比較を示す。表層と底層の温度差に注目して見てみよう。

6月から7月にかけては、観測結果、計算結果ともに比較的長期間にわたって表層と底層とで水温差が生じ、表層は底よりも1~3℃高温となっていることがわかる。特に6月20日から7月5日までは、安定なサーモクラインが形成され、表層と底層とで最大約4℃の差が見られることがわかるだろう。

一方、8月になるとサーモクラインが長期間維持されることはまれになる。これは、底層の水温が初夏より少しずつ上昇し、表層と底層の水温がほぼ同じ温度になるためである。それでも9月までは1日の中のどこかでサーモクラインが形成されていることに注目しよう。

9月になると、短時間のサーモクラインもほとんど観測されなくなり、水温は鉛直方向にほぼ均一となる。

図2(※1より引用)

ちょっと意外じゃない? いわゆるサーモクラインは夏の初めまでで、8月にはむしろ解消しているんだ。真夏は底層の水温の低い層にバスはいるって思いこんでなかった? 北浦のような浅い湖では底層も表層も温度は同じなのだ。ここでも温度計で釣りたい層の水温を計ることの重要さが分かる。

真夏の北浦に生じる底層水流

では上から下まで高温になった真夏の北浦はどう攻めるのか。ヒントは底層水流。

図3に2006年6月30日、9月6日の阿玉沖を通る長手(南北)方向鉛直断面の流速、水温分布を示す。図の右側が概ね北の方向だ。

図3(※1より引用)

6月30日は比較的長期的なサーモクラインが形成されている時期であった。この時は南寄りの風により表層では北向きの流れが生じ、また比較的温度が高い水が風下側に拭き寄せられるため、北側では水温が高くなった。さらに中層と底層では表層と逆向きの流れが生じていた。この水平水流は0.1~0.2m/sであった。

一方9月6日は、サーモクラインが消滅し、湖内全域の水温がほぼ30℃となっていた。北寄りの風が吹いたことによって、表層水が南向きに流れ、中層水と底層水は北向きに流れていた。いずれの場合においても、鉛直断面においては鉛直循環流が見られ、水平流速は0.1~0.2m/s程度、鉛直流速は0.1mm/s程度となっていた。

この表層と底層の水平流の違いは憶えておいて損はない。底層において0.2m/s程度の流れが存在しているって事は、バスやベイトの動き、水草や水底の沈殿物・土砂の状態に間違いなく影響する。

そしてその水流は風に起因されると言うこと。海に近い北浦には季節風の他にも、いわゆる海風・山風が発生する。これに引きずられるように発生した表層の水流は、底層では反流を作り出しているのだ。

さらに北浦へ流入する巴川や鉾田川、多くの水路による水流が影響する。それらを総合的に考えて、釣っている場所の水流を推理するのだ。

実際にバスの居場所を推測

図3の9月6日を例にとってみよう。この日の北風に煽られた南向きの表層流は南岸に当たり底に向かったのち、湖底で北向きとなるのが基本。

ただし図3には湖底の地形により鉛直方向の還流、すなわちターンオーバーが局所的に起きている様子が示されている。これも湖全体の温度が均一となったこの時期の特徴だ。

図の中央に示された水上に突出したポイントは岬(帆津倉岬と思われる)を表すのだが、そのやや左手に水中の突起がある。北向きに流れてきた湖底流はこの突起の左側で上に方向を変えて還流を形成し、突起の右側(すなわち北側)ではその反流として下に向かっている。

魚探により湖底の地形が分かれば、水上に顔を出さない水中の突起であっても、その北側で表層から底層に向かう新鮮な水流が発生しているかもしれない。そこを狙わない手はない。

そしてそこに潜むバスがどちらを向いているかも水流の向きから推定することができる。すなわち突起の北側で水流の来る南を向いてバスはサスペンドしていると考えられる。

いかがであろう。琵琶湖のような水深のある湖であれば、夏であっても湖底に近付くにつれ水温は低くなっていくが、水深10m程度の北浦、印旛沼、雄蛇ケ池などでは上記のような特性を持っていると考えられる。季節を読み、風を読み、地形を読み、水流を知る。そうすれば自ずと魚達の動きも見えてくるというものだ。

参考文献

※1: 北浦の水層構造の数値解析、北澤(東京大学),小松(茨城県霞ケ浦環境科学センター);生産研究速報60巻1号,2008

 

書いた人

芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。理系大学を出て、某メーカーでの30数年のキャリアの間に出願した特許はざっと100件。理屈ばかりにやたらうるさい技術者がバス釣りにはまった。自然の中に身を置く快感、極上の思考ゲーム、テクニックとツールの融合、緊張感とリラックスの混在・・・。こんな遊びは他にない。釣りの中でも特別だ。そしてたどり着いたのがSmart Fishingという楽しみ方。あなたにもぜひそのおもしろさを感じてほしい。

釣り工学カテゴリの最新記事