真夏のベジテーション攻略法は大間違いだった!

真夏のベジテーション攻略法は大間違いだった!

真夏のバス釣りは太陽との闘い。バスもバサーもお日様から逃れようと必死だ。そんな時、頼りになるのがべジテーション。でもマツモだろうがオニビシだろうが同じという訳ではなさそうだ。

水草の種類と溶存酸素の関係をさぐる

日本野鳥の会の田尻らは、 ラムサール条約登録湿地である石川県加賀市の片野鴨池において,野外調査および採集した植物を用いた実験によって溶存酸素量の経時変化と水生植物の関係についての調査を行なった(※1)。

生息している魚類にはモツゴ、タモロコ、ウキゴリ、コイ、フナの他、外来種であるカムルチー、ブルーギル、オオクチバスが確認されている。当然、釣りは禁止である。実際に調査された地点は、こんな場所だ。

図1(※1より)
図2(※1より)

 

いかにもバスがいそうなポイントだ。

 

朝一番に乗り込んで、オニビシが水面をびっしり覆う定点5や、ハスとオニビシが覆う6のカバーの切れ目にテキサスを落としこもうか。

水中にマツモやホソバミズヒキモが茂る定点1や定点2の水草をすり抜けてジグヘッドのグラブを泳がそうか。

3はどちらかと言うとオニビシが薄すぎるような気がするし、4はオープンウォーターで、優先順位からは外れそうだ。

 

そんな事を考えるよね。

 

しかし調査結果は意外なものだった。

驚きの測定結果

さて、実際には溶存酸素量はどうなっているのだろうか?

図3に6月12日、図4に8月9日の溶存酸素量測定結果を示す。

図3:6月のポイント別溶存酸素量(※1より)

 

図4:8月のポイント別溶存酸素量(※1より)

 

表層とは水深5cm、中層は水深1mを示す。表層の溶存酸素量は太陽による光合成に伴い日の出時刻から増えて行き、日没時に最高となった後、夜間は減り続けて日の出時には最低となる。

そして水深1mでは溶存酸素量は終始5mg/L以下。これが真夏の8月9日にはより極端になる。

なんと、深夜から昼にかけては、マツモの生い茂る定点1を除いては、どの地点も中層ではほぼ0になるのだ。

定点5、すなわちオニビシばかりの生い茂っていた地点に至っては、ほとんど酸素がない。夜間に至ってはほぼ0だ。

ベジテーション付近は、非常に息苦しい環境になっていたのである。

「「オニビシが水中の酸素を減らす」」

さらに筆者は片野鴨池から水草を採集し、日照と溶存酸素量の関係を実験により確かめた。

先ほどの野外調査での結果が偶然ではなく、本当にオニビシ(ヒシモ)が原因で酸素が減っていたことを確かめるためだ。

実験に用いた水草はオニビシ(浮遊性)、マツモ(水中)、ホソバミズヒキモ(水中)。

これらを分類して水槽に入れ、日照時間と溶存酸素量の関係を求めた。

その結果、オニビシだけを入れた水槽では、全体としては酸素量は減り続けることが確認されたのだ。

たとえ昼の日照があっても水中の溶存酸素量は微増するにとどまり、夜間には大きく溶存酸素量が低下するからだ。

びっくりしたでしょ。

オニビシって水中の酸素量を減らすんですよ。筆者はこれをオニビシの葉が水上に存在することから、日中に光合成により発生した酸素は空中に放出され、夜間に呼吸により吸収する酸素は水中から得ているためと説明している。

 

そう、植物は呼吸するんです。

そして夜間には光合成がストップするため、むしろ酸素を消費する側に回る。

1日を通してみれば酸素を増やしているが、出しっぱなしって訳ではない。

なので全体が水の中にあるマツモやホソバミズヒキモの周辺では日中に酸素量は増えるのに対して、オニビシの下では酸素量はむしろ減っていくのだ。これはオニビシに限った現象ではなく、水上に大きく葉を広げるハスやホテイアオイでも同様であろう。

 

そしてこれに追い打ちをかける様に「バスは低溶存酸素状態に弱い」という研究結果が見つかった(※2)。オオクチバスはベイトフィッシュであるモツゴやヌマチチブに比べて低溶存酸素耐性が低く、低溶存酸素環境下ではベイトを追わなくなり、2mg/L以下になってしまうと死に至ると言うのだ。つまり浮遊性の水草の下にベイトは居られても、バスは居られないことになる。

真夏のベジテーション攻略法

さあ大変!

今までのベジテーション攻略法は間違いだったのだ。

目からウロコのこれら事実を釣りのタクティクスに落とし込んでみよう。

1)オニビシ等の浮遊性植物は敢えて狙わない。ベイトは居てもやる気のあるバスは少ない。それでもべジテーションを割ってバイトするバスを見たいのなら、夕方限定、トップ限定だ。
2)マコモ、マツモ等の沈水性植物の表層周辺は溶存酸素が多くベイトもバスもいる。でもねらうなら早朝ではなく夕方近くがいい。
3)水草を狙うならサーフェース。水底の溶存酸素は極端に低く、バスの活性も低くなる。ここは重いテキサスやダウンショットではなく、水草の上側でノーシンカーのワームを漂わせよう。
4)真夏のベジテーションは敬遠する。太陽は避けられても溶存酸素は低い。

ただし、溶存酸素量は水草だけではなく、風や水流等にも影響されるので、それらの条件もよく考慮して攻略エリアと攻略法を練るべし。

水通しが良く新鮮な流れが当たるなら、浮遊性植物の下もパラダイスに変わるかも。

五感を研ぎ澄ませて湖をよく見れば、いろんな事が見えてくる。そこにサイエンスの要素を加えれば、バスの居場所も見えてくるさ。

参考文献

※1 ラムサール条約湿地・片野鴨池の溶存酸素量の経時変化と水生植物の関係,田尻ほか,伊豆沼内沼研究報告8号,pp23-34(2014)

※2 Difference in the hypoxia tolerance of the round crucian carp and largemouth bass: implications for physiological refugia in the macrophyte zone,Hiroki Yamanaka et.al.,Ichthyol Res (2007) 54: 308–312

 

書いた人

芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。理系大学を出て、某メーカーでの30数年のキャリアの間に出願した特許はざっと100件。理屈ばかりにやたらうるさい技術者がバス釣りにはまった。自然の中に身を置く快感、極上の思考ゲーム、テクニックとツールの融合、緊張感とリラックスの混在・・・。こんな遊びは他にない。釣りの中でも特別だ。そしてたどり着いたのがSmart Fishingという楽しみ方。あなたにもぜひそのおもしろさを感じてほしい。

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