「良いベジテーション」に必要な3つの要素とは。鍵を握るのは溶存酸素だった!

「良いベジテーション」に必要な3つの要素とは。鍵を握るのは溶存酸素だった!
この記事はこちらの「真夏のベジテーション攻略法は大間違いだった!」を踏まえています。

まだの方は先にこちらをお読みください!

前回の「真夏のベジテーション攻略法は大間違いだった!」では、真夏の浮葉植物エリアは決しておいしいエリアではない事を紹介した。

しかししかし、

「なに言ってんの。リリーパッドのフロッグは真夏の定番パターンでしょ。」

「びっしりと茂ったマツモをテキサスで撃ち抜く。過去に何回もバスを上げているよ。」

と言うお方も多かろう。

それはきっと事実だ。たしかに、条件によってはベジテーションは好ポイントとなるのかもしれない。

その条件とは、一体なんだろうか?

真夏のベジテーション攻略法は大間違いだった!」のまとめを振り返ると、

・浮葉性植物の下は一日中、低溶存酸素。特に早朝の中層部以下では酸欠状態となる。

・沈水性植物であっても、明け方は溶存酸素量が低い。日照時間と共に酸素量が増してくる。

・特に8月のベジテーションエリアはどこも酸欠状態だ。溶存酸素状態に弱いバスはベイトフィッシュを追わなくなる。

と、悪い特徴だらけだ。

つまり浮葉性植物の下にバスはいない。あるいはいても食餌行動を取らない。朝一のゴールデンタイムを水草エリアで過ごす事に意味はない、と言う事になる。

しかし一方で、

・夏の高水温時には浮葉性植物の下は日射を避けられ、かつ低水温となる。

・ベイトフィッシュは低溶存酸素状態に強く、水草エリアを隠れ家として潜んでいる。

という事実も確かだ。

そう、ベジテーションの下にベイトはいるのだ。だから何かの要因によりここの低溶存酸素状態が解消されれば、バスはこのアリアに入り込みベイトを捕獲しようとするはずだ。

その要因とは一体なんだろう?そもそもそんなもの、あるのだろうか?

データに現れた「良いベジテーション」

もう一度、「真夏のベジテーション攻略法は大間違いだった!」のデータを確認しよう。

 

4つの図は上から

・6月の表層

・6月の中層

・8月の表層

・8月の中層

という順で、ポイントごとの溶存酸素の量を示している。

見てみると、ほとんどの折れ線が似たようなパターンで変化しているのがお分かりいただけるだろう。

例えば、上の図のaでは、「上がって下がって、また上がる」というパターン。

下の図のbでは「ずっとほぼ一定の範囲におさまる」というパターン。

しかし、1つだけ他のグラフと全く重ならないグラフが存在する。

そう、定点1の中層だ。

ここではこの異常値と思われる8月における定点1のデータを抜き出して考察してみよう。

下のグラフに、「定点1のデータ」と、別の調査で分かった「バスの生存に最低限必要な酸素量」「快適な生活に必要な酸素量」を示した。

 

ご覧いただきたい。

ベジテーションの真下でも「バスが快適に生活できる酸素」がしっかり確保されているではないか!!

つまり、こういった条件の時に、そのベジテーションは狙い目となる。

この溶存酸素量の突然の増加は何なのか?

これについてはまず、このデータがたった1日のデータであることを認識しなければならない。

その時の気象条件や水流の影響をたまたま受けた結果である可能性が大いにある。

このような突然の溶存酸素の増加の原因として、考えられるのは

①酸素を含んだ新鮮な水の流れが当たった時。

②強い風により表層水に空気=酸素が供給された時。

③強い雨により酸素を含んだ雨滴が降り注いだ時。

であろう。そしてそれこそが、ベジテーションエリア攻略の糸口になり得るのだ。

良いベジテーションに必要な要素

①水流

元来、ヒシやアサザ等の浮葉性植物は流れの緩い所に生育する。これに自らの茎・葉による抵抗が加わり、浮葉性植物の密集エリアは水流が妨げられている。しかし降雨や川の増水、水門の開放等により周囲に水流が発生すれば、その影響により浮葉性植物エリアに新鮮な水が供給される場合がある。その時が狙いだ。

特に外縁部が狙い処となる。新鮮な水流が当たる面に水に導かれるように侵入したバスが、そこに潜んでいたベイトフィッシュを追うという場面が想像できるだろう。

また浮葉性植物エリアに小さなインレットがある、湧水があるといったポイントがあれば、まさに絶好のねらい目だ。時間を問わず狙ってみたい。

②風

強い風が吹いてくれば、表層部の酸素を含む水と中層部以下の水は対流を起こす。すると表層~中層の溶存酸素量は一時的に均一になり、中層部の酸素量は高まる。ただしこれは水面に直接風の当たるオープンなエリアでの現象となる。水面をびっしりと浮葉性植物がカバーしているエリアでは風が葉に邪魔されて対流を作らないと推察される。

風については浮葉性植物の種類によっても条件は変わってくるだろう。イボウキクサやアオウキクサ、ホテイアオイといったいわゆる浮草は、水流や風により吹き寄せられて群落を形成する。それらの群集エリアは風下であったり、流れの吹き溜まりであったりする。と言う事は浮草エリアの外縁部には新鮮な風もしくは水流が当たっている事になる。ここでもエッジがキモとなろう。

ヒシやアサザ、ハスなどは水底に根を下ろして水面に葉を広げているので、風に煽られることはないが、ここでも風面には溶存酸素の多い水が当たる事となるので、方向を定めて狙いたい。

③雨

 

理屈的には影響はあるのかも知れない。雨滴は数1000m上空からタップリ空気に触れながら地表に落下してくるのだから、溶存酸素量は十分だろう。しかし考えてみれば降雨量なんて相当な雨でも数10mm。水深1mのエリアなら全水量の1~2%が上乗せされるだけ。これで溶存酸素量が決定的に上昇するだろうか。

これが浮遊性植物のないオープンなエリアなら、雨滴による攪拌効果で酸素量が増えることも考えられるが、オニビシ等が水面をカバーした状態ではそれも期待できない。

こちらの記事でも雨は釣果に影響しないというレポートがあった。それも考え合わせれば、あまり雨の影響はないかもしれない。

まとめ

では定点1では何が起きていたのだろうか?

定点1は本データを測定した片野鴨池の最上流部に位置し、明渠水路の流入部に最も近い。

定点1で溶存酸素量が高くなった時間帯には、この水路から一時的な流入があった可能性がある。そしてそのような時間帯こそが、このエリアを狙う絶好のタイミングなのだ。

もちろん上で述べた通り、流入水以外にも風や雨がバスの動きを促し、バイトを誘うこともある。
つまり、ベジテーションを攻略するには、ベジテーションの外、例えば水路や風などにも目を向ける必要があるのだ。

それを見つけ出せれば、あなたの釣りの引き出しが一つ増えたことになるだろう。

参考文献

ラムサール条約湿地・片野鴨池の溶存酸素量の経時変化と水生植物の関係,田尻ほか,伊豆沼内沼研究報告8号,pp23-34(2014)

書いた人

芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。理系大学を出て、某メーカーでの30数年のキャリアの間に出願した特許はざっと100件。理屈ばかりにやたらうるさい技術者がバス釣りにはまった。自然の中に身を置く快感、極上の思考ゲーム、テクニックとツールの融合、緊張感とリラックスの混在・・・。こんな遊びは他にない。釣りの中でも特別だ。そしてたどり着いたのがSmart Fishingという楽しみ方。あなたにもぜひそのおもしろさを感じてほしい。

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