琵琶湖のバスのスポーニングはどこから始まるのか?

琵琶湖のバスのスポーニングはどこから始まるのか?

 

 突然だがあなたは「琵琶湖の中で一番に春が来る場所」をご存知だろうか?

 琵琶湖は広い。そろそろスポーニングかな?と思って出向いても、エリアによっては全然、と言うこともザラだ。琵琶湖のどこから春が来るか分かれば、スポーニング狙いは非常に有利になること間違いなしだが…なにせ琵琶湖は日本最大の湖だ。当てずっぽうでは当たるはずもない。

しかし、湖などの水の循環を研究する「水文学」によれば、ピタリとその場所を当てることができると言う。

一体どういうことなのだろうか?詳しく見ていこう。

等しい水環境をもつ地点を結んで流れを分析する

 滋賀大学の遠藤らは、水質を調べることで、南湖における湖水の大きな流れを解析した。調べた項目は水温分布、濁度分布、電導度の三つ。水温は水の流れに大きく関係している。そして濁度と電導度は共に水の汚れ具合をみる指標だ。彼の調査の結果が図1、図2にまとめられている。

まずはこちらの図1から見てみよう。これは8月(上)と12月(下)の南湖の水質を示したものである。左から水温分布、濁度分布、電導度の分布となっている。魚探のような感じで、同じ性質を持つところが線で結ばれている。

ここから特徴をまとめてみると、

【8月】
・水温はおよそ北湖に近いほど冷たい。赤野井湾が最高水温となり、琵琶湖大橋付近に最低温域が現れる。
・電導度、濁度は赤野井湾(図の「AKANOI BAY」)内が最大値を示す。

【12月】
水温は逆に北湖に近いほど暖かい。琵琶湖大橋の南3km付近にある境界から、南下するに従い急
激に低下していく。
・濁度分布、電導度はやはり赤野井湾内が最大値を示す。赤野井湾は流入河川も多く、水質低下の原因
があるのだろう。

 これは何を示しているのか?12月の水温の分布線を見てみると、どれも左肩さがりになっている。特に、琵琶湖大橋に交わる一番上の線は、かなり大きく南湖側にえぐりこんでいる。これをみると、北湖のあたたかな水が西岸沿いに南湖に侵入し、逆に南湖の冷たい水は東岸沿いに北上するという大きな水流があると推定されるのである。

 つまり、水文学の答えは「南湖の春は、北からやってきて、西側を巡る」と言う事になる。

バスの気持ちになって、移動経路を考える

 さあ、バス釣りの話にもどろう。暖かい水があるからといって北湖を攻めればいいと言うのは早まりすぎだ!スポーニングには浅いエリアが適しているからである。真冬を北湖のディープエリアで過ごしたバスたちも、スポーニングに備えてシャローの広がる南湖に移動を始めるのだ。その時には少しでも暖かい水を求めて動くことが想像できる。

 すると早春の狙い目としてのファーストチョイスは、山ノ下湾などの西岸エリアがあがってくる。琵琶湖随一のスポーニングエリアとして知られる赤野井湾ではないのだ。図1に示された電導度や濁度のデータを見ても、西岸の優位性は明らかだ。新鮮でクリアな水は西岸にあり、日射による水温上昇の点でも西岸に分がある。なぜなら、北西に開けた赤野井湾には日射を受ける南向きの湖岸も少ないためだ。

となると、狙いは堅田から山ノ下湾にかけてのシャロー。南に開けた小さなワンドの方が水温上昇が見込めるからだ。ディープエリアからそこに通じるチャネルを探し出せればなおいいだろう。日射があればワンドの奥のどシャローでもいい。ジャークベイトやノーシンカーワームで食い気のあるバスを撃つなんて楽しい釣りが期待できる。

 バス釣りの定説からも、多くの科学論文が示す内容からも、大きなバスからスポーニングに入ることがわか
っている。来るべきスポーニングに備えていち早く動き出すデカバスを迎え撃て!

参考文献

※1:遠藤、最近の測流結果からみた琵琶湖の流況、地質学論集第36号1990

書いた人

芦ノ湖と相模湖にしかバスがいない頃にルアーを始めた。理系大学を出て、某メーカーでの30数年のキャリアの間に出願した特許はざっと100件。理屈ばかりにやたらうるさい技術者がバス釣りにはまった。自然の中に身を置く快感、極上の思考ゲーム、テクニックとツールの融合、緊張感とリラックスの混在・・・。こんな遊びは他にない。釣りの中でも特別だ。そしてたどり着いたのがSmart Fishingという楽しみ方。あなたにもぜひそのおもしろさを感じてほしい。

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