味見をしても食いつかない?生きエサに対するナマズの捕食行動

味見をしても食いつかない?生きエサに対するナマズの捕食行動

エサ釣りはルアー釣りより簡単、としばしば言われる。

たしかにルアー釣りでは、魚が本来口にするはずのないニセモノのエサ(“疑似餌”)を巧みにあやつり、彼らの習性を利用して食いつかせようと知恵比べする。 それと比べれば、エサ釣りでは針に食いつく確率は格段に高くなるだろう。 特に、生きたエサをそのまま針につける場合、釣り人が誘いをかけずともエサ自身が“自然な”動きをするため、魚にとってはたいそう魅力的に映るはずだ。


とはいえ、生きエサを使えば必ず魚が釣れるかというと、当然そうではない。

大物狙いで生きた魚をエサに使う時、アタリだけでなくエサの小魚の動きも手元に伝わってくる。エサを泳がせている最中、急に手元にブルブルと振動が伝わり、さてはアタリがあったか?と仕掛けを引き上げてみても、エサが丸々残っていることもしばしば。

さっきの振動、さては狙いの大物が近くにきているのか。あるいはただの気のせいか。

数少ないチャンスを逃すまいと気負うほど、ちょっとした手応えや違和感まで、何もかもが気になってきてしまう……

と、これはあくまで筆者の個人的な体験だが、実際、生きエサに近寄ってきた魚は、どれくらいの割合で針に食いつくものなのだろうか。 今回は、生きエサに対するヨーロッパオオナマズの捕食行動を野外で観察した、シンプルな実験を紹介する。

ナマズの食いつく瞬間を水中撮影

Boulêtreauらは、フランス南西部を流れるドルドーニュ川で釣り調査を行なった。

エサには体長20センチほどの生きた小ブナを使い、釣り針の1.2メートル上方に水中ビデオをとりつけて、水底から現れる魚がエサにどう反応するかを撮影した。

こうした実験を2013年の7-8月にかけて、計13回おこなった。調査範囲は長さ30キロメートルに及び、合計17時間のビデオ映像を撮影した。そこには、103個体のヨーロッパオオナマズが映っていた。

このうち、映像から体サイズを推定できた95個体について、エサに対する行動を

1) 無視…エサに向かって近づくことなく泳ぎ去る
2) 接近…エサに向かって近づいたが、手前で反転し泳ぎ去る
3) 味見…エサに近づき、口ひげまたは頭部でエサに触れる
4) 吐き出し…エサをくわえたあと吐き出し、泳ぎ去る
5) 針がかり…エサをくわえて飲み込み、針にかかる

の5通りに分類した。どの行動が一番多かったのだろうか?そして針がかりはどれくらいの割合で起こるのだろうか。 以下でさっそく結果をみてみよう。

針にかかるのはたったの12%…?

ヨーロッパオオナマズ95個体のうち、76個体(80%)がエサに興味を示したが、そのうちエサに食いついたのは24個体(25%)だった。さらに、針がかりしたのはそのうち半数の12個体(全体の12.5%)だけで、残りの12個体はエサを吐き出して泳ぎ去ってしまった。 エサの近くまで魚が寄ってきても、実際に針がかりしたのは8匹に1匹の割合でしかなかったのだ。

興味深いのは、全体の4割近い個体が、エサに触れて“味見”したのに食いつかず泳ぎ去った点だ(37個体、39%)。 ナマズは、長く伸びた口ひげや頭部の皮膚表面に「味蕾(みらい)」と呼ばれる器官をもっており、触れた物体の味(=アミノ酸などの化学物質)を知ることができる。これにより視界の利かない濁った水中でも、触れたものをエサかどうか判別できるというわけだ。

しかし、映像をみる限り、ナマズは釣り針や仕掛けの糸ではなく、エサとなるはずの小ブナに触れている。 それでも食いつかずに泳ぎ去った理由までは定かではないが、著者らはナマズの空腹度や、過去にどんなものをエサと認識するよう学習してきたか、といった要素が影響したかもしれないと結んでいる。

たとえ生きエサを使っても、魚たちは必ずしも出会ったエサすべてを食べるわけではない、という点は、頭の片隅に置いておくとよさそうだ。

なかなかアタリはこないけれど

アタリが無くて暇だな…という時間は誰しも経験があるだろう。

こうしたときに、ひとたび疑問が浮かび始めると落ち着かない。

エサは残っているだろうか、とたびたび仕掛けを引きあげてみたり、さてはエサの鮮度が悪くなったか、と頻繁にエサをとりかえてみたり…

こんな風に、焦ったり迷ったりしながらあくせくするのもある意味、釣りの楽しさの一つではある。

とはいえ、日頃のいろいろを忘れてのんびりできるせっかくの機会、来ないアタリを気長に待ちながら、水中の魚の動きにのんびりと思いを馳せるのも、また一興ではないだろうか。

文献情報

Boulêtreau et al. (2016) Do you eat or not? Predation behaviour of European catfish (Silurus glanis) toward live bait on hook. The Open Fish Science Journal 9: 8–14.

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