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スポーニング期のコクチバスの生態から、ビッグバスの居場所を探りあてる

春、バスはスポーニングに向かい行動を始める。その時バスはどこにネストを作り、どういった行動を取るのか?これがわかれば、闇雲にネストを探し当てたり避けたりするのではなく、あらかじめ計算に入れて釣りの戦略を立てられる。

そこで、今回は、青木湖および野尻湖におけるコクチバスの産卵床の調査を紹介しよう。
論文著者の井口らは、ネスト全体の分布、そして1つ1つのネストの材質にどのような特徴があるのか、なんと潜水して目視で観測したのだという。体を張った研究で、シンプルな法則が明らかになった。

調査地は長野県青木湖加蔵と、野尻湖野尻,立が鼻および大崎(図1参照)。調査日は2000年6月13~21日。当地では産卵時期とされている時期だ。早速結果を見てみよう。

図1

陸上からピタリとネストの位置を当てる

それぞれの調査地でバスのネストが見られた地点をプロットしたのが図2である。

図2

一見して桟橋(Pier)があれば、その周辺に集中していることが分かる。さらに詳細にみると、カバーや地質との密接な関係が見て取れる。例えば、ネストのある地点の水深は85~123cmと、ほぼ1mラインをキープしている。また、野尻や立が鼻では主に桟橋、大崎や加蔵では大きな石の周りにネストを作っている。どちらもそれぞれのカバーから28~148cmという近距離だ。さらに水底の砂礫(sunstratum)については、砂や泥質ではなく、細かな砂利質が選ばれていることも明らかになった。このような条件からか、ネストは集中分布しており、隣り合うネスト間の距離は2.4~6.8mであった。

最も大きいバスは最も大きいカバーの最も近くにいる!

ネストのサイズは236~11226平方cm、円形であればその直径は17~59.7cmとばらつきがみられる。Carrが行った研究(1942年)によれば、オオクチバスは自分の体長の約2倍のネストを作るとされている。これはバスがネストを、頭を中心として尾を回転させるようにして形作るためである。本研究ではネストサイズとカバーの大きさとの相関を求めており、図3を見てみると、大きなネストほど大きなカバーに付くことがわかる。

図3

そして特筆すべきは調査の最も遅かった加蔵において観察されたネストは、小さくしかもカバーから遠かったという点だ。これはバスが大型の魚体からスポーニングに入るため、遅れてネストを作った小さなバスは、条件の悪いカバーから遠い地点に作らざるを得なかったものと推察される。

観察を行った6月中旬の時点で、観察したネストの総数は88、その約50%にはコクチバスの卵あるいは仔魚が確認されている。実際にネストにネストを守るコクチバスがいる事も観察されたが、素早く逃避し数の確認には至っていない。

いかがであろうか。たいだい我々バサーが思い描いているイメージに近いのではないか。あらためて参考とすべき事項をまとめよう。

  1. コクチバスは水深1mラインのカバーの近くにネストを作る。
  2. ネストの水底は砂利質。
  3. 大きなバスほど大きなカバーの近くにネストを構える。
  4. コクチバスはネストを集中的に作り、1つネストがあればそこから2~6mの所に次のネストがある。

エピローグ

ネストのバスを釣ることに否定的なバサーも多い。確かにネストを保護する親バスがいなくなれば、ネストにいた卵や稚魚が他の生物から捕食される可能性はあるだろう。でもそれが自然の摂理ではないのか。バスはネストを保護するという強力な生殖戦略により日本の湖沼河川で増殖を続けてきた。そのおかげで我々はバスフィッシングを楽しめるのも事実だ。しかし日本にこれ以上のバスが必要なのか?

私の答えは否だ。バスはこれ以上増えなくていい、バスフィッシングはもっと難しくていいと思っている。その状況の中で知恵を絞ってようやく辿り着く魚でいい。そう思っている。
だからバス釣りはおもしろいんだ。

参考文献

井口恵一朗・淀太我・松原尚人 (2001) 移殖されたコクチバスの繁殖特性. 水産増殖, 49, 157-160.

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