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月齢によってバスの活動水深は変化するのではないか、という研究結果

 釣り人にとって solunar calendar (月齢、月の出、月の入、日の出、日没の時刻を記載した暦)は別名fishing calendar ともいわれ、重要な情報源である。海に棲息する殆どの動物は月齢に影響を受けた生活をしている。この影響は直接的な場合と餌生物の動きなどの影響を受ける間接的な場合があるが、いずれにしても月齢の影響は大きい。それでは、淡水ではいかがだろうか?

 一般には、バスアングラーにとってsolunar calendarは必携で、これを参考にして釣り日を決めるらしい。アメリカ人バスアングラーのブログを見ると多くの人たちが釣果と月齢は関係があると書いている。しかし、科学的な観点から言えば、具体的なデータは何も示されていないことがほとんどだ。ここでは科学的な研究の中で示されている月齢とバス釣りとの関係を紹介しよう。

 まず一つ、アメリカのBASSMASTER発行の雑誌B.A.S.S. TIMES (2010年3月号)に掲載された記事を紹介しよう。M.S. アレン教授が友人のバスアングラーの35年間の釣果記録を解析したものだ。そして結論は、釣果と月齢は無関係というものである。図1に、35年間バスが釣れた日の月が何月であったか、割合を示す。

図1 月齢とバス釣果の関係

図1 月齢とバス釣果の関係

両者が無関係とすると各月齢の釣果の割合は1/4 (25%) になるはずだ。図を見ると、それぞれの割合は確率的に25%と差があるとはいえない。

つまり、月齢と釣れやすさの関係はほぼ無いと言ってよい。

 もう一つの例は、カナダとアメリカの研究者たちが発信器を取付けたラージマウスバス22匹をオンタリオ州の湖(最深部 7 m)で追跡した結果である。追跡期間は2004年11月から翌年9月までで、1日の遊泳距離(活動度を示す)と月齢には何らの関係も認められなかった(図2)(Hanson et al., 2008)。

図2 月齢と遊泳距離および遊泳水深との関係。縦棒は標準偏差(データの散らばりの程度)を示す。(Hanson et al., 2008より)

図2 月齢と遊泳距離および遊泳水深との関係。縦棒は標準偏差(データの散らばりの程度)を示す。(Hanson et al., 2008より)

一方、分布水深の変化をみると、春と夏の夜間には月齢4−6(月光が強い)でラージマウスバスは湖の深部に移動する傾向が明瞭であった。その原因について、著者たちは月齢の間接的影響であるとしている。すなわち、夜間の強い月光を避けて湖の動物プランクトンと小魚が深部へ移動するので、餌魚を追ってラージマウスバスが深部に移動するという説明である。月光と湖の動物プランクトンおよび小魚の分布水深の関係、さらに捕食魚の行動は既に多くの研究者によって調べられていて、納得できる説明である。

 なお、ラージマウスバスが餌を見つける感覚は主に視覚で、眼の感度は極めて高い。McMahon and Holanov (1995)の水槽実験によると、ラージマウスバスは星明かり程度の照度(0.0002 ルクス) でも摂食可能で(餌は活きたカダヤシ)、浅い湖では低層でも夜間の摂食が可能なようである。

 つまり、今の所は、月齢がバスの活動に影響するとすれば「春から夏、夜間に釣れる水深が変わる」という点のみで、それ以外は全く影響がない、というのが科学の結論だ。経験則と比べて、どうだっただろうか?

経験則は、科学では追いつかない真実を捉えていることもある。ぜひ深く考えて新しい知見を発見してみてはいかがだろうか。

参考文献

Allen, M.S. (2010). Do moon phases affect bass fishing? BASS Times, March, pp. 30.

Hanson, K.C., Arrosa, A., Hasler, C.Y., Suski, C.D., Philipp, D.P., Niezgoda, G. and Cooke, S.J. (2008). Effects of lunar cycles on the activity patterns and depth use of a temperate sport fish,
the largemouth bass, Micropterus salmoides. Fisheries Management and Ecology 15, 357–364.

McMahon, T.E. and Holanov, S.H. (1995. Foraging success of largemouth bass at different light intensities: implications for time and depth of feeding. Journal of Fish Biology 46, 759–767.

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