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ラージマウスバスのアタック成功率に影響するもの

 あれ、今何か感触は手に伝わったのに、何もかかってない…という経験は、釣りをしていれば誰しもあるだろう。そんな時、自分のフッキングの腕前を責めるべきか?あるいは、バスのアタックの腕前が今ひとつだったのかもしれない。

 今回はアタックを「餌への接近、餌の吸い込みと口内保持の過程」と定義して、それに対する成功率、つまり餌に接近してから実際に口に含むことができる割合をどれくらいか?を見てみよう。

アタック成功率から、アタックに使っている感覚器が明らかに

 ラージマウスバス(以下バス)の摂食行動における視覚と側線感覚の役割を調べたNew and Kang (2000) の水槽実験(ミノウが餌)では、 感覚器が正常なバスのアタック成功率は80%で、意外と失敗が多い。盲目にしたバスは側線でミノウを感知して捕食できたが、それはミノウがバスに2.6 cm まで接近した時で、この距離からアタックしても成功率は60%であった。側線感覚の有効範囲は狭く、バスの摂食には視覚が重要であることが分かる。

 従って、棲息環境の濁度が増すと餌を視認しにくくなり、 バスの捕食効率は素早い動きをする魚に対しては低下する(Shoup and Wahl, 2009) 。

ベイトフィッシュの「かわし」のうまさ

 バスの摂食は吸引型で、餌魚に接近したバスは口を大きく開けて口腔内を陰圧(外部よりも低い圧力)にして水と共に餌魚を吸い込む。口を開いてから閉じるまでの行動は一瞬で時間は150ミリ秒(Carroll and Wainwright, 2006)。しかし、逃避魚の動きはさらに速い。通常、魚が驚いて逃げる時には先ず体をC字状に曲げる(C-反応)。刺激を受けてからC-反応までの時間は観賞魚のエンジェルフィッシュで18ミリ秒(Domenici and Blake, 1991)、ゼブラフィッシュで15ミリ秒(Burgess and Granato, 2007)。バスが餌魚を吸引摂食するのは容易ではないだろう。

ここまで読めば、いかにバスの捕食成功率が制限されているかよくわかるだろう。

 Lewis et al. (1974) が米国の湖のバス成魚の胃内容物を18ヶ月間調べた結果、空胃率が50% であった。日本に於ける調査でも20−60% の空胃率が報告されている。以前の私の投稿記事で、高い空胃率はバスの低いアタック成功率を示すのではないかと書いたが、その可能性は高いようである。

参考文献

Burgess, H.A. and Granato, M. (2007). Modulation of locomotor activity in larval zebrafish during light adaptation. Journal of Experimental Biology 210, 2526–2539.

Carroll, A.M. and Wainwright, P.C. (2006). Muscle function and power output during suction feeding in largemouth bass, Micropterus salmoides. Comparative Biochemistry and Physiology A 143, 389–399.

Domenici, P. and Blake, R.W. (1991). The kinematics and performance of the escape response in the angelfish (Pterophyllum eimekei). Journal of Experimental Biology 156, 187–205.

Hori, M., Ochi, H. and Kohda, M. (2007). Inheritance pattern of lateral dimorphism in two cichlids (a scale eater, Perissodus microlepis, and a herbivore, Neolamprologus moorii) in Lake Tanganyika. Zoological Science 24, 486–492.

Lewis, W.M., Heidinger, R., Kirk, W., Chapman, W. and Johnson, D. (1974). Food intake of the largemouth bass. Transactions of the American Fisheries Society 101(2), 277–280.

, M., , T. and, O. (2007). Righty fish are hooked on the right side of their mouths – Observations from an angling experiment with largemouth bass, Micropterus salmoides. Zoological Science 24, 855–859.

New, J.G. and Kang, P.Y. (2000). Multimodal sensory integration in the strike-feeding behaviour of predatory fishes. Physiological Transactions of the Royal Society, London B 355, 1321–1324.

Nyberg, D.W. (1971). Prey capture in the largemouth bass. The American Midland Naturalist 86(1), 128–144.

Shoup, D.E. and Wahld, D.H. (2009). The effects of turbidity on prey selection by piscivorous largemouth bass. Transactions of the American Fisheries Society 138, 1018–1027.

Yasugi, M. and Hori, M. (2012). Lateralized behavior in the attacks of largemouth bass on Rhinogobius gobies corresponding to their morphological antisymmetry. Journal of Experimental Biology 215, 2390–2398.

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