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pike underwater photo lake / photo from diving in the lake, fish pike in the natural environment

マズメ時の魚の行動変化 ―日の出、日の入り前後の数十分間を徹底解剖

前回の記事では、マズメ時の魚の行動に関する室内実験を紹介した。

「マズメ」のカギは明るさの変化―魚の活動性と仕掛けの見えやすさ

今回は、野外でくらす魚たちの自然な行動を観察し、刻一刻と状況が変化するマズメ時の水中で、魚たちがどのような行動をとっているのか、詳細に記録した研究を紹介しよう。

潜水観察300時間!

Helfman(1981)は日の出・日の入り前後の時間帯に注目して、計150回以上、300時間におよぶ潜水観察を行なった。場所はニューヨーク近郊のCazenovia湖(広さ475ha、最大水深14m)で、1.4haもある大きな入り江の中に10m四方のメッシュ状に区切った観察用の区画を複数設けたほか、それらの区画をまたぐように、4m幅の測線も5本設定した。

なお、この調査の前には、前述した5本の測線に沿って、日中・夜間に計100回以上、700時間もの予備観察を行ない、のべ20,000尾以上の魚の種類・数・サイズを記録していた。このデータを元に、各魚種が昼行性か夜行性か、単独行動か群れを作るか、どこでエサを探し、どこで休むのか、といった基礎的な情報を整理しておいた。

こうした非常に入念な準備のもとで、昼行性の8魚種と夜行性の6魚種について、マズメ時(日の入り前後・日の出前後)の行動を詳細に観察したのが今回紹介する研究である。

マズメ時の行動パターン

まず、夕方・朝方にみられる行動のパターンは、多くの魚種で共通していた

昼行性の魚は、ある時点で急に活動を終えて休息し始めるのではなく、いくつか段階を経て、昼間の活動状態から夜間の休息状態へと移行していた。

逆に、朝を迎えると、夕方とは逆の順序で行動パターンが移り変わっていた。

 

昼行性の魚は、ある時点で急に活動を終えて休息し始めるのではなく、いくつか段階を経て、昼間の活動状態から夜間の休息状態へと移行していた。

では、各々の魚はどのタイミングで、どんな行動をみせたのだろうか。

ここからは、夕方と朝方に分け、日の出・日の入りの時刻に着目して、魚の行動を詳しくみてみよう。

徐々に活動性の下がる夕方

夕方にみられた魚の行動パターンは、以下の図の通り。

 

夕方にみられた魚の行動パターンを示す。

 

日の入り前後には多くの魚種でいったん活動性があがり、泳ぐスピードが速くなったり、長距離を泳いで移動したりしていた。エサ探しに限らず、昼間の活動場所から夜の休息場所に向けての移動も含まれているが、いわゆる「マズメ時に活性が上がっている」状況と考えられる。

その後、採餌をやめ、群れていた魚は群れを離れて休息場所へと移動し、徐々に泳ぎを緩めて休息に入る様子がみてとれる。
そして入れ替わりに、夜行性の魚種が休息場所(岩の陰や水草の茂みの中)から姿を現し、日の入り後の水中でエサを探して泳ぎ始めていた。

夕マズメにみられるこれら一連の行動は、日の入りの10–15分前から始まり、日の入り40–50分後までのおよそ1時間ほどの間に起こっていた。

日の出より前から一斉に動き出す魚たち

いっぽう、朝マズメの行動をみると、休息を終えて泳ぎだすタイミングには幅があるものの、活動性の上昇、群れ形成、採餌の開始は日の出前の短い時間帯に集中していた。

その後、日の出を迎える頃には昼間と同様の活動場所・行動パターンへと切り替わっており、日の出前20–30分間というごく短い時間帯がいわゆる朝マズメに相当すると考えられた。

ちなみに、夜行性の種は朝方になると、ヘッドライトの光に敏感に反応してすぐに逃げてしまい、ほぼ観察できなかったそうだ。

pike underwater photo lake / photo from diving in the lake, fish pike in the natural environment

朝方と夕方、どちらも「昼と夜の変わり目」という点では一緒だが、魚たちの行動をみると明確に違いがあるようだ。そうなると、同じ「マズメ時」と括られる朝マズメ、夕マズメも、それぞれ効果的な釣り方は違ってくるのかもしれない。

次回はさらに深堀りして、今回とりあげた研究結果をより詳細に分析し、魚種ごとの活動変化の様子を紹介してみよう。

──吉田誠[国立環境研究所琵琶湖分室、博士(農学)]

文献情報

Helfman G. S. (1981) Twilight activities and temporal structure in a freshwater fish community. Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Science 38: 1405–1420.

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