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釣りの「楽しさ」は何で決まる? よい釣り場の条件とは

 楽しかった釣りの思い出は?と聞かれて、思い浮かべることは人それぞれだろう。

 めったにお目にかかれない大物を釣り上げた時の感動や、満杯のクーラーボックスを抱えて帰った夜に帰って食べた、新鮮な魚料理を思い出す人もいるかも知れない。あるいは、事前に立てた作戦や選んだルアーが的中したことに、人知れず満足した経験だろうか。そもそも、釣りに出かけること自体が楽しい、という人もいるだろう。日常を離れ、自然豊かな場所で過ごす時間そのものが、かけがえのない経験であることも間違いない。自分のスタイルや求めるものに合わせて、好みの場所を選んで出かければ、十人十色の釣りの楽しみが待っている、というわけだ。

 では、少し視点を変えてみよう。ある釣り場を訪れる人々は、何を求めてそこにやってくるのだろうか。もちろん、魚を求めてやってくるわけだが、魚が釣れさえすればどんな場所でもよい、というわけでもあるまい。美しい風景や自然に囲まれていたり、施設がきれいに整備されていたりと、魚以外の要素も重要そうだ。

 今回は「釣り場」に着目し、釣り人が何を求めて釣り場を訪れるか、何が釣りの楽しさを決めるか、といった視点でおこなわれた、とある調査の結果を紹介しよう。

釣り人100人に聞きました

 ニューヨーク郊外に位置するHeiberg記念林には、地元の大学が管理する池が点在し、多くの釣り人が訪れる。現地で活動する研究者のMoellerとEngelkinは、1969年から翌年にかけて、釣り人100人を対象に聞き取り調査をおこなった。問いはシンプルで、「日帰りの釣行で『釣りの楽しさ』に影響するのはどんなことか?」というもの。釣り人ひとりひとりにアンケート用紙を配り、以下の8項目:【水辺への出やすさ、釣り施設の充実度、周囲の自然の美しさ、釣り中のプライバシー(人目の少なさ)、釣れた魚の数/大きさ、水質、天候】のそれぞれについて、重要さの度合いを「とても重要(3点)」から「あまり重要でない(1点)」までの3段階で評価してもらった【図1】。

 このとき、解析のための参考情報として、過去の釣り経験と、社会的・経済的な項目(就労状況や学歴など)についても聞き取った。回答者の属性は、平均年齢40歳、釣り歴は平均25年で、男性が約9割を占めており、直前におこなわれたアメリカ北東部6州の広域調査(7,000人弱)とほぼ同様の構成だったことから、この地域の釣り人層をおおむね反映していると考えられた。 

自然を感じられる釣り場が「よい釣り場」

 さっそく結果を見てみよう。8項目中、釣り人が最も重視していたのは「釣り場の水質」で、100人の平均で3点満点中2.65点という高得点を叩き出した。続いて、第2位は自然の美しさ(2.38点)、第3位が人目の少なさ(2.28点)となった【表1】。

 この結果をみると、多くの釣り人にとっての「よい釣り場」とは、美しい自然に囲まれて、他人を気にせず釣りできる場所だと言えるだろう。

ベテランや年長者は、釣果をさほど重要視していない

 いっぽう、釣れる魚の「大きさ」と「数」はそれぞれ第4位、第6位と、意外に重要視されていないという結果が出た。点数でみても、3点満点で1.76点、1.58点と、アンケートの中間値である2点を下回っていた【表1】。

 ここで興味深いのは、回答者の年齢や釣り歴によって、傾向が違っていたことである。釣り歴10年以下のビギナー(平均4.7年)は「釣れる魚の大きさ」を、45歳以下の若い釣り人(平均31歳)は「釣れる魚の数」を重要だと回答した。対照的に、釣り歴10年を超すベテランや、46歳以上の年長の釣り人は、釣れる魚の大きさや数をあまり重要としていなかった。

 年齢や経験を重ねるとともに、釣果に左右されず、釣り自体を楽しめるようになる、ということだろうか。

普段忙しい釣り人ほど天気が気になる?

 釣りに使える時間に目を向けてみると、1週間の余暇(自由に使える時間)が短い釣り人(週20時間以下)ほど、釣りに出かけた時の天候をより重要だと回答していた。出かける前に天気が気になるのは誰しも同じとして、いざ釣りに出てしまえば、多少雨に降られても「釣りに出なければよかった」と思うことはそこまで多くない気もする。しかし忙しい人にとっては、釣りに出られる数少ない機会、せめて天気くらいはよくあって欲しい、と感じるのは無理もないかもしれない。

 釣りに出かける時、「どこに、何の魚を釣りに行くか」は誰もが最初に決めることだ。一方、自身が何を決め手にしてそれらを選んでいるか、あらためて意識する機会がなかなか無いのも事実だろう。参考までに、今回の調査で使われたアンケートの内容を再掲する。今後の釣行をより「楽しい」思い出にするために、自分が何を重要だと感じているか、知っておくのもよいかもしれない。

文献情報

Moeller GH & Engelken JH (1972) What fishermen look for in a fishing experience. Journal of Wildlife Management 36: 1253–1257.

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