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上級者のロッドワークを科学的に分析してわかったこと|東大アングラー研究記

編集部より
読者ライター「さかだい」さんの記事をお届けします。

さかだいさんは、東大で生物学を学んだバリバリの「研究脳」。釣り歴は浅いものの、そのノウハウを生かして、上級者との差を縮めるべく日々研究中です。

今回の記事のテーマは、ロッドワーク。初心者と上級者の竿の動かしかたの違いを分析した論文をもとに、「どうしたら上級者のようにアクションできるか」を考えていきます。

上級者のロッドワークについての研究があった!

さまざまな物事と同じく、釣りにも経験によって得る技術というものがあります。いわゆる「コツ」です。

一度わかってしまえば簡単なことと感じるのですが、わかるまでが大変……。私もまずこの壁にぶつかりましたし、まだまだ超えなければならない壁があります。

最近ようやく、1万円を超える竿やリールを購入して(まだまだ安いですが……)、一丁前の釣り人風に釣り場に通い始めましたが、隣の釣り人が釣る中、自分が釣れないということを何度も経験しています。

打ちひしがれながらも、上級者を一生懸命観察をしたところ、まずロッドワークのしなやかさや正確性が異なっていると感じました。当たり前ですが、うまい人は経験からロッドアクションの「コツ」をつかみ、上達をしています。

その経験の差を埋めるために勉強しようと、釣り時の動作を研究している人はいないかと探しました。試行錯誤・探索の結果、有用な研究を見つけましたので紹介したいと思います。こちら↓です。

『ルアー釣り動作の解析』「2014年度 日本水産工学会 学術講演会 講演論文集」
不破 茂, 山口 祐輔, 江幡 恵吾, 藤田 伸二

この研究は、釣りの動作を機械で測定し、解析を行うことで定量的に動作の評価をすることによって、技術の改良のためのマニュアル化を促しています。この論文をもとに、上達のための秘訣を考察してみました。

この記事を読めば、初心者はルアー釣りでまず何に気をつけるべきか、中級者以上が高みを目指すには何に気をつけるべきなのか、科学的に考えるためのヒントが得られると思われますので、最後まで是非ご覧ください!

上級者のロッドワークは、どんな特徴があるのか

出典:『ルアー釣り動作の解析』を元に編集部作図

この実験では、キャスト後に図1のような竿に接続したセンサーによってリトリーブ時の張力の変化を測定しました。実験台になったのは、竿も握ったことがない初心者から、釣行日数1000日を超える上級者まで、計7人。同時にカメラでアクション時の動作を測定し、画像解析をしました。

ここでは、
1 釣糸張力の大きさと間隔
2 アクション動作の再現性
3 張力の時間周期
4 動作の姿勢
の4点に絞って研究を行っています。

1 釣糸張力の大きさと間隔

張力の平均を求めると、上級者は256g、中級者は196g、初心者は185gとなりました。つまり、上級者は初心者の約1.4倍の張力でラインテンションをかけていることがわかります。

また、リトリーブ時にかけたテンションの最大回数を測定したところ、上級者は初心者の⒈5倍以上の回数をかけていることがわかりました。これを言い換えると、上級者は⒈5倍以上の小刻みなアクションを素早く行うことが可能だということです。

2 アクション動作の再現性

中級者と上級者は同じくらいの動作の再現性がありました。つまり、中級者以上になるとアクション動作はそこまでばらつかないということです。

しかし、初心者はばらつきが大きく、中級者以上の2倍近くばらついていました。

3 アクションの間隔

1000日を超える経験を持つ上級者以外は、アクションとアクションの間隔がみな一定ではありませんでした。

300日の釣行経験を持つ上級者も一定の間隔が見られなかったので、克服が難しい問題であると解釈できます。

4 動作の姿勢

リトリーブ時の頭部と釣り竿間の距離の変化を計測した結果、上級者は距離をほぼ一定に保っているものの、初心者は距離の変化が大きかったようです。

つまり初心者は、上級者、中級者と比べて体軸が大きく動き、姿勢が不安定です。

研究結果のまとめ

以上の1から4をまとめると、上級者はルアーを正確なタイミングで、テンションを一定に強く、素早くかけることが可能で、姿勢が安定した状態で釣りをすることができるとわかりました。
一見当たり前かもしれないですが、上達の条件が科学的に説明されたことに価値があると言えます。

考察:では、実際の釣りにどう生かせばいいのか?

この研究は、モデル化された環境で行われた実験です。では、ということで、この研究を実際の釣りにどのように応用するべきかを考察しました。

1 身体能力の向上と体のメンテナンス

例えば、ラインのテンションが上級者ほど強いと述べました。

上級者が皆が皆、筋骨隆々でないことは承知してますが、重いタックルを用いる時などではどうしても力が弱いとテンションをうまくかけられないですね。常に強いアクションにすればいいということではないと思いますが、必要に応じて、強いルアーアクションを引き出せるのは重要です。

また、スタミナがないと動作の再現性が悪くなります。よって、筋トレや走り込みなどで、身体能力を向上させる必要があります。

もう一つ大事だと思われることは、体のメンテナンスです。

タックルのメンテナンスは行っている釣り人は多いと思われますが、自分の体のメンテナンスは行っていますか? 疲労が残っていると、パワーや安定性がなくなります。下手すると、腱鞘炎や怪我につながる危険性があります。

よって、湯船にゆっくり浸かる、睡眠、栄養はきちんととるなどできるところからやってみると良いと思われます。(筆者健康オタク故、語ると長くなるので詳しくは省略)

2 タックルのクオリティをあげる

私も入門者用の安いタックルから入りましたが、最近は1万以上の中級タックルに変更しました。なんと言ってもやはり、軽さが違います。軽いので、疲労が溜まらず、動作のパワーや安定性が向上します。

また、高級な竿は高反発のものが多く、手元の力が弱くても、しっかりとアクションすることが可能であると思われます。

予算が許す限り、タックルの質の向上を検討するといいと思われます。

3 自分の釣っている動画と、プロの動画を見比べる

自分の釣っている姿とプロの姿を比べることで、フォームの修正を行うことは試す価値があると思われます。

自分は、スマホで横から自分の姿を撮影し、帰宅後にプロの動画をYouTubeで同時に見ながら修正すべき場所を見つけて、ノートに記録しています。

もちろん、動画には映らないような場所が原因の可能性もありますが、動画で勉強できて克服できる部分は克服したほうが効率的ですよね。

最近では、本格的な野球の練習は中学生までだったものの、YouTubeで変化球を独学してプロ野球選手に人が現れるくらい、動画学習はバカにできない勉強です。例えば、「自分はワキが開きやすいが、プロは開かない、次はワキを締めよう」などは動画で十分学べることですね。

スマホ一つ持ってれば、無料でできることなので是非参考にしてください。

4 竿を握っている時間を増やす

理論はもちろん重要ですが、実戦なき理論は意味がないです。

なので、少しでも竿をにぎっている時間を増やすべきです。もちろん闇雲に振り回せと言っているのではなく、この記事で学んだ理論やプロの意見をもとにアクションをする回数を増やして体に染み込ませることが重要です。

ここで一つアドバイスです。

テーマは一つ、多くても二つに絞ることをおすすめします。私は正直そんなに要領が良くないので、何個も同時に気をつけようとするとパンクしてしまうのでテーマは一つか二つに絞っています。つい先日の釣行でも、張力をしっかり張ることだけを意識していました。

この手法は我流ではなく、自分がやっている武道の指導者用のマニュアルにも明記してありますし、大手学習塾でのアルバイトを行なっていた時も、個別指導の時に気をつけるべきこととして先輩から学びました。

また、執筆時はコロナの自粛期間で、その上これから梅雨が待っているため、釣行できない人も多いと思われます。そういう時は、動画を観ながら家で竿を握って、イメージトレーニングすることも効果的ですね。

まとめ

このように科学的データを活用して、上達のヒントを得ることができることが多少なりとも理解していただければと思います。もちろんこの記事の内容だけでなく、他にも気をつけるべきことは山ほどありますが、何かしらの参考になれば幸いです。

このようなスポーツ科学ならぬ、「釣り科学」というべき内容を今後も機会があれば解説していきたいと思いますので、期待して欲しいです。

文献情報

『ルアー釣り動作の解析』「2014年度 日本水産工学会 学術講演会 講演論文集」不破 茂, 山口 祐輔, 江幡 恵吾, 藤田 伸二
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pamjsfe/2014/0/2014_123/_article/-char/ja/

 

読者ライター:さかだい


東京大学で水産学を初めとした生物学を学んだ後、地方医大に入り直す。現在、夢の外科医を目指し修行中。
幼少期より大都会暮らしのため身近には魚が乏しく、余り釣りをしていなかったが、魚が豊富な田舎暮らしを始め、釣りに興味を持ち始める。しかし、上級者との差に絶望。魚の生態からアプローチすることで、釣果をあげられるのでは?と考え、様々な学術論文を学ぶことで経験に頼らず釣果をあげることに奮闘中。座右の銘は”愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ”だが、経験から学ぶことが多々で反省。

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