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霞ヶ浦にはどんなベイトフィッシュがいるのか? バスアングラー的霞ヶ浦魚種考 吉田幸二さん連載第3回

編集部より
吉田幸二さんによる「霞ヶ浦のバスフィッシングを基礎から知る」シリーズをお届けします。
今回のテーマは霞ヶ浦のベイトフィッシュ。いつもの吉田幸二さんらしく、軽快に書かれていますが……、超重要な内容、と編集部は理解しています。バスの動きは基本的にエサによって左右されている、というプロもいます。次回の釣行の計画を立てる時も、またよりバスを理解するためにも、「保存版」な内容です!

<これまでの連載はこちらから>
第1回:霞ヶ浦ってどんなとこ?基礎から知って釣りにつなげるための吉田幸二さん新連載!

第2回:吉田幸二流 霞ヶ浦のバスフィッシングと、それを支える「考え方」

いや、いや、早いものでこの連載も3回目ですよ。頑張っているなぁ~俺。笑 さて、今回はどんな話にしようかと考え倦(あぐ)ねていたら(早くも3回目で考え倦ねるなよ。笑)、編集長の山田さんからお題を二つ戴いたので、その中の一つで行かせてもらいますね。

霞ヶ浦の魚種考

そのお題の一つてぇのが、霞ヶ浦に棲息している魚、それもバスに密接に関係している……今は密が駄目なんですけれど、水の中でのことだし、自然界の生き物のことなので、OKてなことにしましょうね。

そこで、先ずは霞ヶ浦に棲息している魚類は何種類ぐらいいると思います? あっ、甲殻類も入れて良いですよ。両生類や爬虫類は除外しますがね。バスアングラーの皆さんなら多分、10種ぐらいしか判らないでしょうね。ま、ま、ま、ま、そんなもんですよ。でもね、実は70種とか80種とか言われているんですね。

僕もバスアングラーなんですが、霞ヶ浦に棲息している魚種のうちで50種ぐらいは釣っていますよ。もちろん、淡水ハゼ類やタナゴ類にも数種おりますし、フナだって数種類いますからね。

左:バラタナゴ 右:フナ・コイ

 

これらの棲息している魚種のことがわかってくると、僕たちの対象魚であるバスの動きも予測できるようになります。つまり、バスを見つけやすくなるんですね。ですから、霞ヶ浦に棲息している魚のことをこの機会に知りましょう。覚えましょうね。

でも、今回はバスに密接にかかわっているワカサギとシラウオ、ヌマチチブなどの魚類と、テナガエビやスジエビなどの甲殻類について紹介しますね。

吉田幸二さんとブラックバス

ワカサギ(サケ目・キュウリウオ科)

各地の湖沼に放流されて、釣りの対象魚として親しまれています。山上湖での氷上釣りが有名ですが、霞ヶ浦にもバッチリ棲んでいます。と言うよりは原産地だったりします。古くからワカサギ釣りが有名な湖沼のワカサギは、そのルーツが霞ヶ浦産のものが多いんですよ。

概ね一年魚で、早春に生まれた卵が春に孵化して、夏(5~6㎝)から秋(10~12㎝)ほどに成長を遂げて、冬に抱卵して早春に湖岸や河川を遡って産卵をします。これを毎年繰り返します。

その年のワカサギの生産量を決定するのは、孵化した稚魚が順調に餌を食べられるか、否かにかかっています。外来魚の食害も影響しますが、生産量の決定は稚魚期に食べられる餌があるかどうかなんですね。

もちろん、霞ヶ浦でも自然産卵しており、その産卵場所が前記したように、1m内外の砂礫底なんですね。ワカサギの卵は付着沈性卵なので、霞ヶ浦では棕櫚床(しゅろどこ)に受精卵を付着させた人口孵化を行っています。積算で240℃から270℃で孵化するとのことです。つまり、水温が8℃では孵化まで30日間かかり、10℃だと25日ほどで稚魚が産まれるのです。この産まれたときの餌の量で生産量が上下するのです。

シラウオもワカサギと同様の産卵期のため、シラウオと餌の競合があるので、先に産まれた方が優先的に餌を捕食し、その年の優先順位を決めるようです。そのために、ワカサギが豊漁の年はシラウオが少なく、シラウオが豊漁の年はワカサギが少ないという生産量カーブを産み出すのです。

左:夏のワカサギ7㎝ 右:翌年の春のワカサギ12㎝

シラウオ(サケ目・シラウオ科)

早春に霞ヶ浦の湖岸で釣りをしていると、水面を泳ぐ透明な魚をよく見かけます。あまり泳力がないので、網ですくえそうなほど接岸して来ます。その魚をすくってみると、初めて見た人は透明であることに驚くようです。「こんな汚い水の中に、こんなきれいな魚がいるんですね」と。

もちろん、霞ヶ浦の水は濁っていますが、ペットボトルにすくってみると透明感はあります。この濁っているのは植物プランクトンが多いからなんですね。で、植物プランクトンは動物プランクトンの餌になっている……その動物プランクトンを食べて成長するのがワカサギやシラウオなどの魚たちなんです。

昔から水清ければ魚棲まず……なんてぇ言われているように、栄養価(プランクトンの量)が低い水域に棲息する魚は、餌不足のためにその種類も棲息数も限定されてしまうのです。

これは人間にも言えることで、余りにも清廉潔白で高潔過ぎると、友人や知人として取っ付き難い、付き合い難いてぇことなんですよね。多少の不良っ気や荒くれ魂、やんちゃさのあった方が、人間としては魅力的ですからね。と、まぁ、そう言う訳で、霞ヶ浦にシラウオが棲息することに、まったく不思議さはありませんのよ。

で、前記したようにシラウオの産卵期はワカサギと被っていますね。でも、今年は6月の終わりまで産卵していたようです。ハリにかかったシラウオを外した時に卵が手に着きましたからね。ワカサギ同様の沈性付着質なので、指からなかなか取れませんでした。

このシラウオにしろ、ワカサギにしろ、産卵で接岸する時期にはフローティングミノーが大活躍をします。産卵は春に行われますが、前記したようにその年の気候で多少のずれがあります。覚えておきましょう。

左:生きているシラウオ 右:死んでいるシラウオ

淡水ハゼ類(ヌマチチブ・ウキゴリ等)

霞ヶ浦は日本一この淡水ハゼ類が棲息していた湖でした。1㎡に20匹もの淡水ハゼ類が棲息していたのです。さて、淡水ハゼ類と書きましたが、現在まで確認されているのは12種です。このうちのヌマチチブ、ジュズカケハゼ、ビリンゴ、ウキゴリなどが多く棲息しているようです。地元ではこれらを総称して、ゴリと呼んでいます。

10数種のハゼ類のうちで霞ヶ浦本湖に多く棲息しているのは、前記した通りヌマチチブやジュズカケハゼなどです。これらのハゼ類を捕獲してみると似たようですが、体色や紋様に違いがあります。この特徴の差異によって、様々なルアーが効果的になっていると思われます。

また、沿岸部と沖合、河尻、湾奥など、種によってその生息域が異なったり、産卵の時期がずれたり、方法が異なったりするので、これら淡水ハゼ類の動向を知ることは、年間を通じて釣果の安定に通じるでしょう。

産卵期は5月から8月で、水底に穴を掘ったり、二枚貝の貝殻の中や石の隙間などに卵を産み付け、これをオスが守ります。縄張り意識と子育て本能が最も強くなる時期です。

孵化した稚魚は一時期水中を漂いますが、やがて底棲生活をするようになります。動物プランクトンやアカムシなどの底生生物を食し、1年で4cmほどに成長します。概ね10cmほどまで成長を続け、最大では15㎝にもなります。

左:一年魚のヌマチチブ 右:ヌマチチブ

ジュズカケハゼ

阿見町で捕れたマハゼ

甲殻類(テナガエビ・スジエビ)

甲殻類としたのは、テナガエビもスジエビも(共に十脚目・テナガエビ科で)同じような行動形態だからです。大きく違っているのは、スジエビは淡水型でテナガエビは汽水域でも生活することですね。これは、一般的にテナガエビの幼生は、汽水域まで降下しないと成長できないのですが、河川残留型の陸封テナガエビもいます。

また、スジエビのオスとメスの体長を比べるとメスの方が大きいです。一方、テナガエビはオスが大きくなります。長く立派な手を持つのがテナガエビのオスです。昨今はこのテナガエビの釣りが霞ヶ浦で盛んに行われています。

いずれも強い肉食性で、小魚や生き物の死骸、アカムシやイトミミズなどのベントス(底棲生物)類などを食べて成長します。寿命は概ね1年から3年ほどで、縄張り意識が強く、他の個体とよくケンカをしています。

産卵はいずれも5月から9月で、夏場に多く産卵するのがテナガエビです。この産卵の時期にメスを求めて大型のオスが接岸するので、湖岸のあちこちでテナガエビ釣りに興じる釣り人を見かけるようになります。

霞ヶ浦の古老の話によると、真夏に暑い日が数日間続くと、ヨシ原の奥でエビの幼生が爆発的に発生するとのことでした。ヨシ原はこれらのエビ類の産卵のためにも、失ってはいけない水生の植生帯なんですね。

左:スジエビ 右:スジエビのメス

左:テナガエビ 右:ザリガニ

 

と、まぁ、ここまでワカサギとシラウオ、淡水ハゼ類、エビ類のことをつらつらと書いて参りましたが、紛れもなくこの三種はバスの格好の餌になっています。しかし、バスたちはこれらが少ない時期には別のものを食べて生き長らえています。その時に食べている食料を探し求め、食べられている生き物の生態を知ることも、バスフィッシングを成功に導くパズルを組み上げるための重要なパーツです。

バスフィッシングの面白さはジグソーパズルやクロスワードパズルのように、幾つものパーツを揃えて、それらをキッチリ組み上げて、正解の回答を手にする作業の面白さです。縦横斜め、左右前後がキチッと出来てこそ完成した時の喜びが大きいのです。さぁ、パーツを一つひとつ集めに行きましょう!

<シリーズ記事>
第1回:霞ヶ浦ってどんなとこ?基礎から知って釣りにつなげるための吉田幸二さん新連載!
第2回:吉田幸二流 霞ヶ浦のバスフィッシングと、それを支える「考え方」
第3回:霞ヶ浦にはどんなベイトフィッシュがいるのか? バスアングラー的霞ヶ浦魚種考
第4回:霞ヶ浦の魚 アメリカナマズ・チャネルキャットフィッシュのこと

1951年生まれ。日本のバスフィッシングの創成期から活動するアングラー。数々のトーナメントで活躍したのち、霞ヶ浦のトーナメント団体W.B.S.を立ち上げる。霞ヶ浦を舞台にした「Basser All STAR CLASSIC」では、並み居る日本のスター選手を抑え優勝。霞ヶ浦を知り尽くしたアングラー。

NPO水辺基盤協会 理事長

ブログ:熱血! 幸運児

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