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ルアーのカラーセレクトは効果あり?効果 なし? 科学的アプローチで探るルアーの 色問題|東大アングラー研究記Vol.2

編集部より
東大・研究脳&釣りにドハマリ中の読者ライター「さかだい」さんの記事をお届けします。
テーマは「ルアーのカラー」という難問。この百家争鳴な問題に、科学のメスを入れた論文を紹介します。キーは「濁度」です。

ルアーのカラーセレクトについて、2つの考え方を聞いたことはないでしょうか?

「こんな時はこんな色が釣れる!」
「いやいや、色は関係なくて、釣れる時はなんでも釣れるし、釣れない時は釣れない」

よく聞く基本的な考え方は、濁りが強い時にはアピール系カラー、水質がクリアな時はナチュラルカラーというカラーセレクトです。そのほかにも、「春は赤」「アワビが絶対」……等々、多くの経験則が語られます。

しかし一方で、カラーセレクトに意味がないという主張も、個人的には増えているように思います。もしルアーのカラーが釣果に関係ないのならば悩み事が一つ減りますし、経済的です。とは言えカラー変更の直後に釣れた経験がありますし、同様の経験をしたことある読者さんも多いでしょう。さらに突っ込んで考えれば、カラー変更前のルアーにスレていたため、カラーを変えたことでスレが解消されたことが原因で釣れた可能性も否定できません。つまり、色そのものが重要なわけではなく、「色が変わったこと」がバイトのきっかけになった、という可能性です。

どの説もサポートする理由は個人の経験から生まれた感想の域をでないので、残念ながら科学的とは言い難いものです。(もちろん、上級者の経験から生まれた説はとても有用であることが多いです)

よって、ルアーのカラーによってどれだけ釣果に差が出るのかを正確に判断することは、経験の浅い自分をはじめとした釣り人にとって難しいテーマです。

しかし、実際の釣りの参考になるかもしれない論文を見つけましたので、この場を借りて共有してみたいと思います。

▼文献情報
ニジマスの採餌応答に見られるルアー色と濁度の交互作用
魚類学雑誌 64(2):113–119 2017 年 11 月 25 日発行
西大嵩樹・丸山 敦

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jji/64/2/64_64-113/_article/-char/ja/

図 色とりどりのルアーたち。釣り人もよく釣れる。

1日に7時間、11日間釣り続ける!

この論文は、ある実験をもとにしたものです。そしてその実験とは、「ひたすら釣り続ける」というもの。箇条書きにすると、以下のようなものです。

・1人の釣りに熟練した研究者が、
・ニジマスの養魚場の岸に設定した 5ヶ所をランダムに回りながら、
・同じタックルで、リトリーブスピードは毎秒リール 1回転、
・ルアーの潜行深度は 0.5 m 付近に統一して、
・ルアーにはスリムスイマー1.5 g(シマノ)。

……という条件で釣りをしました。さらに↓↓

・ルアーカラーは8色、(シルバー、ゴールド、ピンク、オレンジ、ブラウン、ダークグリーン、カラシ、ブラック)、
・これを10分ごとにランダムに変更して、
・10分×8色の80分1セットとし、
・このセットを1日に5サイクル分実施。
・これを11日間(!)続ける。

……つまり10分を計440回反復したことになります! 根性ですよね。できる限り正確に、科学的に釣りを解明しようとする姿勢、見習いたいです。

この実験で特にフォーカスが当てられたのは、「濁度」です。濁度と、実際にどれだけ釣れたのかデータを取り、統計学的に解析することで、濁度によるカラーへ食いつきの変化があるかを検証しています。

図 実際に用いたルアー。色以外の条件は全て同じです。(出典:上記論文Fig.1.を筆者トリミング)

ルアーのカラーによって、釣果に差がでたのか?

早速、結果を見てみましょう。

図 横軸が濁度で、縦軸が釣果と読めばいいでしょう。線や点の色は、ルアーカラーです。右下の図は全ての線を重ねて比較しやすいようにされてます。(出典:上記論文Fig.2.)

 

気になるのは、以下のような点です。

・ナチュラルカラーや光るカラーは、澄んでいる時はよく釣れるが、濁ると釣果が落ちる。
  ナチュラルカラー → ブラック、ダークグリーン、ブラウン
  光るカラー → シルバー、ゴールド
・黄色、オレンジ、ピンクなどのアピール系カラーは濁りの影響は受けづらい。
・濁りが強いほどナチュラルカラーよりもアピール系カラーは有利になる。

言いかえると、NTUが0、つまりとても水が澄んでいる時は、ルアーカラーがブラウンだと、ピンクやオレンジの2.5倍の釣果を得ることができる。しかしその一方で、NTUが12の時、つまり水が濁っている時はルアーカラーがブラウンだとほとんど釣果はないが、ピンクやオレンジは、澄んでいる時と同じ釣果を得られるようです!

つまり、ニジマスの採餌行動において、濁度は色の選好性または発見効率を変化させるので、一般的に言われているカラーローテーションが有利になる、ことが科学的に導き出された、ということになります。

よって、実際の釣りに生かすとすれば、「派手目のカラーとナチュラルカラーを持っていくのがいい」ですね。もちろん、スレないようにそれぞれに数種類のカラーを用意するのは皆さんにはいうまでもないでしょう。

「よし、さっそく色々なカラーを買ってこよう。」という人ちょっと待った!

この研究をフィールドで実践するときの注意点を。

濁度を指す「NTU」とは、工業の分野で定められたひとつの指標、と理解してよいでしょう。北海度の自治体ホームページによれば、「10NTU以下であれば、見た目には透き通っています」とあります。また、北海道の河川の上流部、それも森林内を流れる渓流では、通常10NTU以下と言われているそうです。
http://www.okhotsk.pref.hokkaido.lg.jp/sr/tsr/keikaku/dakudotyousa2.htm

とは言え、専用の機器がなければ正確なNTUは測れません。あまり数値は気にせず、色々な濁りで実験して、このくらいの濁りならこのカラー、というような感覚を掴むのがいいでしょう。

図 果たしてこの水の濁度は? 毎回濁度計を持っていくのはちょっと違う。専用の分析装置は10万円超えますので、そんなお金あるならいい釣り道具をそろえましょう。

 

また、この研究はあくまでもニジマスのデータでの考察ですので、魚種によって異なる可能性は十分にあります。例えば、アオリイカは世界が白黒に見えるようで、この結果が当てはまるわけではないでしょう。

魚が見ている世界と人間が見ている世界は異なることに気をつけてください。これはわかってそうでわかっていない感覚だと思います。論文の筆者も、今後ニジマスにはどのように見えているかを明らかにすることが課題であると述べています。研究が成功しニジマスの視覚が明らかになったら……、期待してしまいますね。

図 世界が白黒にしか見えないと言われる、アオリイカ。確かにカラーセレクトは有効だが、この法則には当てはまらない。

 

この実験は養魚場での結果で、野生魚でも当てはまるかどうかも不明です。養魚場の魚は人工餌を食べていますが、野生魚は虫や小魚を食べています。釣果が変わる可能性はもちろんあるでしょう。また、1人の研究者が行った実験のデータで、いつでもどこでも誰でも当てはまるわけでは無いことにも注意が必要です。

ただ、このように釣果データを科学的に分析した研究は、今までの個人の感覚に頼っていた釣りから脱却することを可能にする、「釣りの科学」における極めて重要な研究であることは疑いようがないと思います。

ゆくゆくは色々な釣り人からの膨大な釣果データを、人工知能が解析し、カラーセレクトの最適解を教えてくれる時代が来るかもしれません(それが楽しいか、楽しくないかは別として)。関連する研究も面白いものが多いので、今後も機会があれば、他の研究についても調べて解説します。最後まで読んでいただきましてありがとうございました。

▼編集部より:ルアーのカラーが気になっているかたは、こちらの記事もどうぞ。

大物バス狙いには明るい色?―ソフトルアーの色が釣果に及ぼす影響
https://labs.smartlure.co/2019/05/13/color-bigbass/

魚にとって“見えやすい”ルアーとは―色のコントラストと学習
https://labs.smartlure.co/2019/06/24/lurecolor/

ルアー選びで悩む、その前にールアーはどれだけ釣果を左右するか
https://labs.smartlure.co/2019/06/03/lure-effect/

 

読者ライター:さかだい


東京大学で水産学を初めとした生物学を学んだ後、地方医大に入り直す。現在、夢の外科医を目指し修行中。
幼少期より大都会暮らしのため身近には魚が乏しく、余り釣りをしていなかったが、魚が豊富な田舎暮らしを始め、釣りに興味を持ち始める。しかし、上級者との差に絶望。魚の生態からアプローチすることで、釣果をあげられるのでは?と考え、様々な学術論文を学ぶことで経験に頼らず釣果をあげることに奮闘中。座右の銘は”愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ”だが、経験から学ぶことが多々で反省。

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