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カスタムしたリールは純正を超えるのか?「カスタムパーツ屋」の視点で考えるリールカスタム

編集部より

カケヅカさん連載第4回は、リールのカスタムについて。第2回記事でもベイトリールのフィネス化を紹介してくれていましたが、より根本的な部分で、カスタムについて考えてみます。

第1回記事:レンタルボート&エレキスタイルで楽しむバス釣りに最適なリールセレクトとは?
第2回記事:お安めベイトリールのベイトフィネス化と使い方・出しどころ
第3回記事:バスフィッシングのベイトリールのハンドルは左右どちらが正義なのか?を改めて考える

なぜリールをカスタムする人がいるのか

こんにちはカケヅカです。

今回は自分の本職であるリールカスタムについて書かせて頂きたいと思います。

箱から出したばかりのノーマルリール。多くのアングラーはこの状態で使う。

 

まず、なぜリールをカスタムするのかという素朴(?)な疑問。

それは「自分専用機にする」が自分の回答です。

ハンドル長からスプールの溝深さ、足の長いスタードラグやオフセットクラッチまで、自分専用に仕上げた1台。

ノーマルリールは不完全なのか

さて、世の中のアングラーはメーカー純正リールに対してどう思ってるのでしょうか。

メンテナンスのために全バラシした状態のリール。これだけの部品が1つに組み上がってると思うと、凄いバランス……。

 

2018年頃から、「カケヅカデザインワークス・KDW」で、Twitter上で無料抽選会と称して、自社生産のパーツをプレゼントしてるのですが、その際簡単なアンケートを実施してまして。

そのアンケートの中では、手持ちのリールをノーマルで使ってる人が全体の8割ぐらいなんです。そして「特に純正で不満は無い」と回答してるんですよね。

リールカスタムパーツメーカー主催のアンケートでこの結果ですから、母数の大きなアンケートなら、ノーマルで使ってるという人の割合はもっと高くなるのではないかと推測します。

つまり世の中のアングラーの多くは、リールをノーマルのまま使っていて、しかも特に不満は感じてないという事が言えると思います。

ではなぜリールをカスタムするのかといえば、上に書いたように「自分専用機」にするためですが、一口にカスタムと言っても多種多様。それを活字で説明するには本何冊分になるか見当も付かないので、自信を持って割愛します(逃避。

ただし確実に言える事は、どんなにカスタムしてもトータルで純正を超える事は出来ないという事。カスタムとはトレードオフ、等価交換でもあるという事。

何かを得ようと思えば何かを捨てる事になる」という事です。

チューニングとカスタムの違い

良く混同されるのがカスタムとチューニング。この2つは似て非なるものだと個人的に思ってまして。

これは持論になりますが、

カスタム=何かを付け足しその分何かを削る事
チューニング=リールの使用感を最適にする事

だと考えてます。

言葉遊びだとツッコまれると何も言えないんですけど、簡単に言うとノーマルでもカスタムでも、良い状態で使うためにメンテンスするのがチューニング、性能面で何かを特化させるのがカスタムだと思ってもらうとわかりやすいかと。

例えば抵抗の大きなルアーを巻くために、小型リールをロングハンドルに交換したとします。得られるものは『巻きトルク』ですが、代わりにギヤに必要以上の負荷がかかります。結果ギヤ等の摩耗に繋がりリールの寿命を削る事になるでしょう。

ベイトフィネスリールにパワーハンドルをセットしたところ。あきらかにバランスがおかしい(笑。

 

そんな事をするぐらいなら最初から大型でトルクのあるリールをチョイスすれば良いと思われるかもしれません。でもギヤ比であったりスプール径であったりパーミングのしやすさであったりと、持ち主にとっては意味も意義もある、小型リールに大型ハンドルというカスタムを選択する訳です。

これはほんの一例ですが、要はカスタムには”大なり小なり”リスクを伴うという事を理解するべきではないかと。

リスクを伴う『カスタム』に対して、『チューニング』はぜんぜん別です。わかりやすい例として、ギヤやベアリングにオイルやグリスがまったく切れた状態で使えば、極端にリールの寿命を縮める事になりますよね。

ノーマルリールでも一切メンテナンスをしないで使えば、壊れないまでも良い状態で使う事はできません。逆にフルカスタムしたリールでも、適切なメンテナンスをしていれば、比較的良い状態で長く使える事も珍しくありません。

リールは工業製品ですから、それを理解しながら使う事が調子の良い状態で長く使うコツとも言えると思います。

リールカスタムの手段と目的

カスタムにはリスクが伴う訳ですが、それを理解しないで使うと原因不明の不具合に見舞われる事になります。

リールカスタムは手段であり、一部の性能を特化させる事で特定のルアーを扱いやすくする事が目的だと思います。もっとシンプルに言えば、多くの人は魚を釣るためにカスタムすると言っても良いでしょう。

上で書いたロングハンドルについて解説すると、

●プレッシャーのかかったヘビーカバーにスモラバを入れてデカバスを獲りたいので、ヘビーロッドにベイトフィネス用リールをセットする。

●でもリールがノーマルだと巻き上げトルクが足りないので、ロングハンドル(パワーハンドル)をセットして、フッキング後に潜らせないようにゴリ巻きする。

●当然リールの剛性に対してハンドルがオーバーパワーなので、ギヤが欠けたりボディーが歪んだりするかもしれない。

●それをわかった上で、あえてパワーハンドルをセットして、それでなければ獲れない魚を狙う。

……といった感じでしょうか。

リールカスタムはバランスを崩す

当たり前ですが、純正パーツで構成された純正リールはバランスが取れてます。そのどれか一つでもカスタムすれは、そのバランスが崩れる訳ですから、当然リールの寿命を縮めますよね。

クラッチレバーをジュラルミン削り出しの社外品に交換。純正は樹脂製だけに耐久性アップは間違いないが、その分他に影響があるのかも。

 

もちろんカスタムしたからといって極端に寿命が縮まるとは限らないですが、純正で使って20年使えるところ、カスタムしたら15年で不具合が出るといった感じかもしれません。

しかしリールは道具です。使い続ければ不具合はありますし、いつかは壊れます。その寿命を少しでも伸ばしてやるためにチューニングやメンテナンスをする訳ですよね。

リールカスタムパーツ屋として自分が言うのはおかしいかもしれませんが、カスタムするという事はある意味リールのバランスを崩す事でもあります。

工業製品というのは、どこかに必ず弱い部分を設けて、強い負荷が掛かった時にはその部分から破損するように設計されてるものです。

もしもいきなり換えの効かない部分から破損してしまったら、その製品自体が終わってしまいますからね。

電気製品にヒューズが設けられてるように、リールにもあえて弱く作ってある部分があるので、そこが先に壊れる事で修理を容易にしていたり、原因がわかりやすくなってる訳です。

カスタムするという事はその弱い部分を強化して、他の予想も付かない箇所を破損させてしまう危険性があるんですよね。

もしかしたらそれが取り返しのつかない破損や故障に繋がるかもしれません。

極端な言い方になってしまいましたが、カスタムするという事はそのリスクを覚悟して行う必要があると考えてください。

さいごに

カスタムのリスクについてお話しましたが、多くの場合はカスタムによってリールが破損するという事はまずありませんのでご安心ください。

超人的な釣行日数や、巨大サイズの魚とのやり取りを繰り返すような使い方じゃない限りは、よほど奇をてらったカスタムじゃなければ心配いらないでしょう。

それにしても、大手釣具メーカーさんが作るリールは凄い技術の結晶だと思います。同じものを作れと言われても、自分レベルには到底無理な事なんですよね。

なので絶妙なバランスで組み上げられた純正パーツより優れたパーツを作れると思ったら、それは奢りです。

完成したものを見てから、「もっとこうした方が良い」と思ってパーツを作るのは後出しジャンケンみたいなものですから。

自分のようなカスタムパーツメーカーが作るのは、ノーマルパーツを否定するものではなく、万人向けに設計された部分を個人が使いやすいように特化させるものだと思ってます。

全く同じ形でカラーだけ変えるというパーツもありますが、それはドレスアップというジャンルなので、ちょっと分野が別かな、と。

自分が今の仕事をしていて、リールの寿命を伸ばすためのカスタムパーツというのは見たことがないし、もちろん自分でも作った事がありません。

それだけ純正パーツは考えられてるんですよね。

なので、もしもカスタムパーツでノーマル状態より基本性能をアップさせようと思うなら、それは無理だという事を認識してください。

もしもこれからリールカスタムを考えてる方がいたら、自分がこれから攻めようとしているフィールドの特性やルアーの動かし方等を良く考えて、それに寄せたチューニングなりカスタムから始めるのが良いかと思います。

リールにもよりますが、まずはポン付けできるスプールやベアリング、その後にハンドルやハンドルノブなど、自分専用機に仕上げていくのが楽しいのではないでしょうか。

もちろんノーマル状態を道具として大事に、またはガンガン使っていくのも良いかと思います。

釣りや釣り道具には色んな楽しみ方がありますので、カスタムやチューニングも自分なりの楽しみを見つけてもらえたら幸いです。

 

<シリーズ記事>

第1回記事:レンタルボート&エレキスタイルで楽しむバス釣りに最適なリールセレクトとは?
第2回記事:お安めベイトリールのベイトフィネス化と使い方・出しどころ
第3回記事:バスフィッシングのベイトリールのハンドルは左右どちらが正義なのか?を改めて考える

東京足立区で主にルアーフィッシング用リールのカスタムパーツを製造してる50歳のオッサンです。関東のレンタルボートフィールドでバス釣りを楽しみながら、NBC房総チャプターを始め各ローカルトーナメントにも参戦しています。 バス釣りのモノ作りで人生を楽しく生きるブログ KAKEDZUKA DESIGN WORKS

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