
クランクベイトを巻くのに最適なリールをカスタムパーツ屋目線で選んでみる
編集部より
カケヅカさん連載第5回は、巻物の代名詞とも言えるクランクベイトに最適なリールを考えてみます。
第1回記事:レンタルボート&エレキスタイルで楽しむバス釣りに最適なリールセレクトとは?
第2回記事:お安めベイトリールのベイトフィネス化と使い方・出しどころ
第3回記事:バスフィッシングのベイトリールのハンドルは左右どちらが正義なのか?を改めて考える
第4回記事:カスタムしたリールは純正を超えるのか?「カスタムパーツ屋」の視点で考えるリールカスタム
こんにちはカケヅカです。
自分はここ2年ほどクランクベイトの釣りにハマってるのですが、タックルによって釣れる釣れないがハッキリ分かれる事を実感してます。
今回はリールカスタムパーツ製造者目線で、クランクベイトを巻くのに最適なリールを考えてみたいと思います。
釣る事を仕事にされてるバスプロやプロガイドの方に言わせると、全然違う回答になるかもしれませんが、あくまでも工業製品を見る目での考察という事でお付き合いください。
過去の記事で何回か触れてますが、自分は房総リザーバーをホームにカバーフリップばかりやってたのですが、ここ数年は巻き物の釣りにシフトしつつあります。

先日は房総リザーバーの一角、豊英ダムでハードベイト縛り修行。なんとかジャークベイトで一本。
ホームレイクの亀山ダムのカバーが年々プアになってきてる事と大きく関係してるのですが、一節によると農薬の関係で水質が変わったのが原因と言われてますが、その理由等を説明するのはここでは割愛させて頂きます。
しかし事実レベルで、青々とした枝の崩落カバーが出来ても、すぐに朽ち果ててタダの立木やレイダウンになってしまい、美味しそうなヘビーカバーである期間が非常に短くなってしまいました。
それにリンクして自分の釣果も年々落ちてきて、もうフリップ一本ではキツいと思ってたところ、釣り仲間にアドバイスをもらったり、タックルの見直しなどしてる中、クランクベイトの釣りの楽しさに開眼したという感じです。
なので巻き偏差値はまだまだ低いのですが、自分が釣れるようになったタックルの変化について、リールを中心に書いてみようと思いました。
リザーバーとハイギヤリール
前置きが長くなってしましましたが、ここからやっとリールのお話です(笑。
巻き偏差値が低い自分ですが、これまで巻き物をまったくやらなかった訳ではなく、むしろ意外と好きな方です。ただ、カバーが豊富で根がかりが多いリザーバーがホームなので、スナッグレス性の良いスピナーベイトを投げる事が多かったんですよね。

過去に亀山ダムでD-ZONEに襲いかかってきたゴーマル。この時も沖の自分の船に向かって突進してきた。
そして自分の経験上、リザーバーのカバーを釣る上では、巻き物にはハイギヤリールが良いと思います。
これは船から釣る事が前提なのですが、バンク撃ちをしていてヒットした魚が沖に向かってダッシュしてくる事が非常に多いんです。つまり自分の方に向かって泳いでくるんですよね。
このとき巻取りが間に合わずにジャンプ一発でバレる事が良くあるんです。なのでギヤ比の高いリールを使う事で、ヒット後、手前に走ってくる魚に合わせて糸ふけを出さずに巻き取る事ができるという訳です。
フッキングが甘くなりがちなので、結構硬めのロッドをチョイスしてます。1/2オンスのスピナーベイトなら、番手で言うとM〜MHぐらいの長めのレギュラーテーパー。それに重さのあるロープロ系ハイギヤリールをあわせます。
長めのロッドで巻き物をやる時は、手元に重心があった方が安定するので、あえて重めのリールをチョイス。自分はSHIMANO18バンタムMGLのHGがベストです(ちなみにマグネットブレーキシステムにカスタム済み)。

お気に入りの18バンタムMGL。もちろんフルカスタム。
そこまでロングキャストしないので、Avail製マイクロキャストスプール(浅溝)で、飛距離よりも弾道やアキュラシーを重視。
しかしこれはスピナーベイトを使った時の話で、クランクベイトは全然違うという事に気づきます。
クランクベイトとローギヤリール
ではここからはクランクベイトとリールについて考えてみます。ここで言うクランクベイトはシャローカバーに絡めて使う、シャロークランクの事になります。

友人作のハンドメイドバルサクランクベイト。謎に釣れる一品(笑。
さて、湖岸線をカバーに覆われたリザーバーでは、トリプルフックが2つも付いたハードルアーをカバーの中に撃ち込んで巻いてくるのは中々に精度と度胸が必要だと思ってました。
でも適切なタックルなら意外なほど魚に触れるんですよね。
その適切なタックルというのは、スピナーベイトと時と真逆。”柔らかいロッドにローギヤリールの組み合わせ”です。
自分のブログでも書いてるのですが、ブリブリ泳ぐシャロークランクは硬いロッドだと動きが死にます。
ちょっと柔らかすぎるぐらいの方がクランクベイトが活き活き泳ぐんですよね。その時ブルブルの振動を手に感じながら巻いてくるので、リールはノーマルかローギヤが圧倒的にやりやすいです。
いや、そんなの当たり前だと思われるかもしれませんが、そこは巻き偏差値低いオジサンなのでどうか温かい目で見てください(笑。
これまでならガードの付いたジグやテキサスリグを撃つようなカバーに、クランクベイトを投げて巻いてくるというのは中々衝撃的でした。でも釣れます。そして意外と根掛からない。
ゆっくり丁寧に巻いてくると全然根がからないんですが、ハイギヤでゆっくり巻くには集中しないといけなくて、油断するとすぐ早巻きになってしまいます。
同じ動作を繰り返し繰り返し行うには、なるべくオートマティックにやれてしまうシステムが大事だと考えてますので、ここは素直にローギヤリールを使った方が間違いないと思うんですよね。
丸形リールの剛性感
ここからはリールカスタムパーツ職人としての目線になりますが、個人的にクランクベイトにはアルミ削り出しボディーの丸形リールを好んで使ってます。
具体的に言うとSHIMANOカルカッタコンクエスト系が好きで、特に17カルカッタコンクエストBFSを溺愛してます。これは本当に良いリールなんですよ。

愛機17カルカッタコンクエストBFSカスタム。現行で高剛性丸形リールのベイトフィネス機はこれ一択。
高剛性丸形リールをベイトフィネス機として使えるというのは、思った以上に快適なんですよね。適度に重量があるのも巻き物には向いてます。
クランクベイト、とくにバルサハンドメイド系のクランクは空気抵抗が大きく、しかも重心移動システムなどが無い固定重心ですから、できるだけスプールの立ち上がりが軽い方が良いです。
でもブリブリと巻き抵抗は大きいモノもありますから、巻きトルク欲しい。
それを両立してるのが高剛性丸形ベイトフィネスリールのカルコンBFSという訳です。これをカスタムしたモノはシャロークランクを投げる上で最強だと思ってます。
リールの製法と剛性
どのリールも、金型に溶かした金属を流し込んで整形する『鋳造(ちゅうぞう)』でボディーの原型を作った後に、細かい部分をマシンカットして仕上げてると思われます。というか絶対そう。

Daiwaのフラッグシップ機を分解したところ。国産リールの精度は本当に素晴らしい。
ロープロリールの場合は鋳造で整形したボディーが殆ど完成形に近いのに対し、丸形は金属の固まりから削り出してるんですよね。

20カルカッタコンクエストDC101のボディー。刃物による削り目がわかるでしょうか。
理想は、完全に無垢の金属から削り出した方が剛性も強度も高いはずですが、さすがにコスト的にそこまでは出来ないでしょう。でも鋳造の段階でかなり肉厚にして削りしろを設けてるはず。
より多くの削りしろを残してる分だけ剛性も精度も高いと想像できますよね。
そして世の中の多くのベイトリールのボディーが3ピースなのに対し、カルカッタコンクエストは2ピース構造です。

SHIMANO13メタニウムXGを分解したところ。ボディーフレームと両側のサイドカップという3点でボディーが構成されている。ちなみに片側のサイドカップは樹脂製。

往年の名機01カルカッタコンクエスト。メインのボディーに片側のサイドカップという2点で構成されている。
丸形のメリットとしてボディーの嵌め合い(はめあい)の精度を高く出来る事が挙げられますが、その上2ピース構造ですから、さらに高い剛性感が期待できるという訳です。
コアソリッドボディー
ところでカルカッタコンクエスト以外にもボディーが2ピースのベイトリールがあるんです。それがSHIMANO18バンタムMGLと20メタニウム。

コアソリッドボディー搭載の18バンタムMGL(画像左)と20メタニウム(画像右)。
2018年に登場した18バンタムMGLは『コアソリッドボディー』という一体整形で作られたアルミボディーで、ハンドル側のサイドカップもメタル製です。これはメチャメチャ剛性感がありますね。

18バンタムMGLのボディー構成。メインのボディーフレームにメタル製のサイドカップという2点で構成されている。
その2年後の2020年に登場した20メタニウムは、同じコアソリッド構造ですがアルミより軽いマグネシウムで作られてるので、高剛性&軽量というボディーを実現してます。
工業製品というのはパーツの点数が少なければ少ないほど剛性が高くなりますから、ベイトリールもシンプルなほど剛性も精度も高いと言えます。
そして何より、カルカッタコンクエストに比べて18バンタムMGL&20メタニウムは安価なのが凄いところ。
実はコアソリッドボディーは製造上の精度が出しやすく、パーツの点数が多い他のリールに比べて加工が容易なんじゃないかと。
製造コストで一番高いのは人件費ですから、一体整形ボディーにする事で人の手による工程を大幅に削減できた事が安価の要因なのではと邪推してます(笑。
それでも高精度&高剛性の上に、値段的にもお手頃というのは、ユーザーにとってはすごくありがたい事ですね。
クランクベイトの話しから逸れまくってしまいました。すみません(汗。
クランクベイトとリールのスプール径
最後にクランクベイトに使うリールのスプール径について。

32mm径浅溝スプールを搭載した17カルカッタコンクエストBFS。画像はAvail製マイクロキャストスプールに交換済み。ノーマルよりやや深溝で、ラインキャパが増えるところがミソ。
一般的なシャロー〜ミッドクランクに使うリールのスプール径ですが、立ち上がりの軽さを重視するなら32mm径(かそれ以下)が良いと思います。
自分の場合は現段階では17カルカッタコンクエストBFSが最強ですが、投げやすさだけなら他のベイトフィネス機でも良いかもしれません。
ただしスプールの溝が深いタイプは径が小さくても立ち上がりがあまり軽くないタイプがありますのでご注意を。そのリールがダメだと言う事では全然なくて、軽めのクランクベイトを投げるのに向いてないという意味ですので誤解の無いよう願います。
目安としては、10g以下のクランクベイトを投げるならベイトフィネス機を使った方が快適なキャストが出来ます。SHIMANOなら17カルカッタコンクエストBFSか16アルデバランBFS。2021年発売のSLX BFSなんかも良いのではないでしょうか。
自分は基本的にSHIMANOリールが好きなので、他のメーカーのリールをあまり使わないのですが、例えばDAIWAならアルファス系が良いと思います。
でも現在のところ高剛性丸形リールのベイトフィネス機は17カルカッタコンクエストBFSしかないので、やはり最強はこのリールになってしまいますね(しつこくてすみません)。

レンタルボートからシャロークランクベイトを投げるなら、本当に使いやすい17カルカッタコンクエストBFS。
コアソリッドボディーの18バンタムMGLや20メタニウムはスプール径34mmですから、タイニークランクを投げるのには向いてないですし、中々自分の理想とするクランクベイト用リールが無いのが惜しいところです。
さいごに
散々好き勝手書いてしまい申し訳ありません(笑。
リールは道具だし、ルアーをキャストできればそれで良いとは思います。でも釣りの楽しみは様々ですから、リールに拘ってみるのも楽しいんですよね。
今回の記事を読んで、「いや、自分ならこのリールがクランクベイトに最強だ」というご意見がある事でしょう。
それで良いと思います。むしろそうでなければダメだとも思います。
人の意見はあくまでも人の意見、自分が使いやすいと思うリールが一番良いリールです。その究極がカスタムリールだと思ってます。
個人的にはSHIMANOからコアソリッドボディー搭載のベイトフィネス機を出してくれないかと密かに期待してます。
SHIMANOさん、ぜひ22アルデバランBFSコアソリッドを!!
勝手な事を言ってすみません、失礼しました(笑。
乱文をお読み頂きありがとうございました。
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