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スマートルアーの「狙い」図

【Kickstarter】「スマートルアー」は役に立つのか? 深掘りで見えてきたデータ×ルアーの真の狙い

「世界初のIoTルアー」。

それが、このスマルア技研の運営社たるスマートルアー社が、ファーストプロダクトに付けたキャッチコピーです。

【Kickstarter全訳】smartLure Model Zero – ビッグデータで“釣りの秘密”を解き明かす世界初のIoTルアー

世界初ということで、おそらくみなさんも、また開発には関わっていないスマルア技研編集部員も、その「IoT」なるものがどんな機能を持っているのか、また自分の釣りにメリットがあるのか、まったくわからない or 気になるところだと思います。

というわけで、スマートルアーの言い出しっぺであるおかむら氏に、「IoT」の部分、そしてデータが何を明らかにするのか、ということについて聞きました。

編集部ヤマダがようやく理解したのは、スマートルアーの「本当の狙い」。少し長くなりましたが、ぜひご覧ください。

なお、ルアーとしての実釣性能、強みに関しては、別記事でこちらも根掘り葉掘り聞いています。
【Kickstarter】smartLure Model Zeroは釣れるのか? 開発者に聞いたルアーとしてのパフォーマンス
【Kickstarter】ATTIC・高洲 敏春さんModel Zeroコメント

スマートルアーが取得する水深・水温・明るさ

──まずは、このルアー、そしてデータで釣りの秘密を明らかにするという試みを始めた理由を教えてください。

その昔、生物学の研究者になりたかったんです。しかしまったく違う道に進んで、それなりに働いて、それなりの歳になりました。で、フと釣りを始めたら、これがまったく釣れない(笑)。

そこからスイッチが入って、その昔の生物学への憧れも重なって、いろいろ調べていきました。魚や釣りと関係するような学術書や論文を読んだりなんだり……。

それでわかったのは、「実は研究者もわからないことだらけ」という現実です。これがきっかけで、そしてサイエンスと釣りを掛け合わせたら何が起こるだろう、と考えた結果が、このスマートルアーでした。

──Kickstarterの記事を読みました。そこから読み取れるこのModel Zeroの機能は、下記のように認識しました。大枠として間違いはないですか?

①ルアーが泳いだ水深(軌跡)がわかる
②水温がわかる
③水中の明るさがわかる
④フッキングした時を始め、ルアーの「微妙なアクション」をビジュアル化して表現
⑤キャストした場所を地図上に表示
⑥場所・気温・晴雨・風・月齢・日時などのデータと統合できる
⑦写真などのデータを釣り人が追加できる
⑧上記のデータをアプリに蓄積できる
⑨上記のデータを他人と共有できる、他人のデータも見られる

はい、だいたいそのとおりです。

──ではまず、①ルアーが泳いだ水深(軌跡)がわかるという点について。これはどんな機能でしょうか。

実際のグラフを見ていただくと分かりやすいと思います。

水深表示イメージ

以下、アプリ画像は開発中のもの。ルアーの潜行深度が表示されている。

 

横軸はルアーが水面について、出るまでの時間です。縦軸がその時に泳いでいた水深、ということになります。

これで何がわかるかと言うと、

・ルアーがどれだけ潜っているのか、
・どの水深で釣れたのか、

……というのが基本です。数センチの差が分かります。

──もし仮に、ずっとボトムにノックさせながら巻いてきたとしたら、地形の変化が見えたりもしそうですね。つまり、魚探的な情報。

そうですね。最大潜行深度は2m程度ですし、根掛かりは怖いと思いますが。クランクベイトを巻いて、自分が釣っているスポットの水深を認識するということをしている人もいると思いますが、その精度が上がります。

言いかえれば、オカッパリで浅いところを釣っていくような場合には、魚探の代わり的な使い方もできると思います。

その他にも、ジャークした時に横に飛んでいるのか縦に潜りながらダートしているのか、とか、ラインの太さの違いやロッドティップの位置でどれだけ潜行深度が変わるのか……、といった、釣りをしている最中に曖昧になってしまうような細かい部分も、より明確になってくると思います。

さらに言えば、そういう「センサー」としての機能よりも……、いや、これは後でお話ししましょう。

──では、②水温がわかる、ですが、これは分かりやすいですね。でも、例えば水温計で測ったり、魚探で見られるものだとも思います。

そうですね、ポイントは、各水深での水温がきっちりわかることを目指している、ということでしょう。もし表層と2m地点の水温に差があれば、それも明確になります。

水深ごとの水温表示。投げ入れた地点と手前の差もわかることになる。

水深ごとの水温表示。投げ入れた地点と手前の差もわかることになる。

 

通常、水深ごとの水温は、基本的にはセンサーなり水温計なりをその位置まで下ろさないと取れないと思います。このルアーなら投げて巻くだけでわかります。もちろん最大潜行深度までですが。

──アプリ側にデータを蓄積しておいて、以前の釣行と比べられる、と思っていいですよね。

はい、例えば冬から春にかけて、スポーニングがからんで水温の変化に敏感にならざるを得ないような時などに、役に立ちそうです。エリアごとの水温の違いも手間なく記録しておけますからね。去年と比べてどうか、という比較ももちろん可能です。

──③水中の明るさ、はいかがでしょうか。濁度、濁りぐあいとは違いますね。

これはもう「明るさ」です。例えば朝と夕方は低くなりますし、日中でも曇りならもちろん。濁りで光が遮られるような湖では、晴天の真っ昼間でも低くなります。そうした環境全体の影響を受けたうえでの、ルアーがある場所の明るさを記録できます。

例えば朝マズメが釣れる、というのは、経験的にまず間違いなくそのとおりですよね。じゃあ、同じように暗い条件で、その他の時間帯はどうなのか。曇りや雨のローライトのコンディションは本当に釣れるのか。グンゾー先生の記事で、ラージマウスバスの捕食行動は、明るさによって変わる、という研究が紹介されています。どれくらいの暗さまで見えるか、は、酵素反応とか、かなりケミカルな要素決まっているはずです。これまで、水中の明るさなんて把握しようがなかったのですが、スマートルアーならわかります。

水温とか水中の明るさといった、水中環境の情報。
ルアーの深度やアクションの激しさ、パターン。
さらに、気象情報や月齢情報。
それと、釣果を結び付けて詳細に記録できます。

そして釣れたというデータが蓄積されて、今までお話ししたような各種の条件と付き合わせて、大きなデータとして見てみると、どうなるか。

スマートルアーの「本当の狙い」はなにか

──なるほど、少し見えてきました。つまり、このsmartLure Model Zeroには、2段階の「メリット」がありそうですね。

そうなんです。ひとつは、センサー入りルアーとして使って、魚探や、一部はそれを超えるデータをとって、見ることで自分の釣りの精度が上がる。これはすぐに得られるメリットです。

もうひとつは、言わば「釣れる法則」が見える、かもしれない。釣れたというデータ、そしてその時の正確で詳細な環境データが積み重なることで、そこになんらかの法則性・原理・ルール・メカニズム……というようなものを見いだすことができるかもしれない、ということです。

ひとつめの自分の釣りの精度が上がるというのは、もちろんそうなんですが、むしろ私たちが本当にやりたいのは、後者の、法則を見つけ出す、というようなことです。さきほど少し言いかけたのは、このことです。カンタンに図にすれば、こんな感じになるでしょう。

スマートルアーの「狙い」図

明るさとルアーカラーの関係で、暗い時には、メタリックなシルバーより塗り系のホワイトの方が強い傾向がある、とか。

朝マズメ、クリアウォーターでは一瞬だけど、濁った水のエリアでは魚の活性が高い時間帯が長い、とか。

これらのポイントは、ひとりのデータでやるのではなく、みんなのデータを解析して、なんらかの法則を導き出す、という点です。

スマートルアー = 顕微鏡説

──……それが明らかになるなら……、アツい、かもしれません。

こうしたことが、個人の経験則ではなく、「みんなのデータ」から確かなモノになるとしたら……、今までの釣りとはまったく違った世界が開けると思いませんか?

もちろんそれほど単純ではないことは良くわかっています。ルアーによっても違うでしょうし、魚にも個性があるし、湖が違えば結果も変わる。その他いろいろ、変数が極めて多い。しかし、これまで蓄積してきた釣り人の経験則 ──非常に重要だと思いますが── をデータで裏付けられたり、あるいは、今まで気付かなかった法則が見えてくることが十分にあり得ると考えています。

──スポーツでも、そうしたデータの活用が盛んになっていますね。サッカーで、A選手の最高速度が○km/hで、走った総距離は○kmで……、というような。野球でも、セイバーメトリクスのような分析手法が導入されて、「送りバントは得点期待値を下げる」と明らかになったりしていますね。

そうですね。私たちがイメージしているのは「顕微鏡」かもしれません。顕微鏡ができてはじめて、微生物が見えるようになった。そして微生物の存在を知ったから、病気の原因やメカニズムが特定できて、治療につながったんですよね。

そういう意味で、釣りという世界をより精緻に見るための道具。より根本的な原理や法則を見いだすための道具。それが私たちが作りたいものです。

──なるほど。では、多くの人に使ってもらって、実際に釣果を生まなくてはなりませんね。さらに、このModel Zeroという一種類のルアーだけじゃなくて、もっといろいろなタイプのルアーが必要そうです。

もちろんです。そのために、ATTIC・高洲さんに加わっていただいていますし、実際に釣れるものになっていると思っています。

正直に言えば、細かい機能に関しては、未だ開発中の部分も多くあります。それに、本当は、3タイプぐらいのルアーを揃えた方がいいかもしれない、とか、いろいろ葛藤はありました。しかしこのタイミングでKickstarterに出したのは、やっぱり私たち自身に手応えがあるからですし、釣りに対して、こういう視点を持っているみなさんと早くつながって、同じ船に乗って欲しい、みなさんと一緒に秘密を明らかにしたい、という気持ちからです。

みなさんが賛同してくれて、使って、結果を出してくれれば、ルアーフィッシングの秘密が明らかになります。それをいち早く共有できます。それにその他のスマートルアーも作れるようになって、さらに世界を見る目が精緻になっていきます。

私たちのビジネスのこともありますが、それ以上に、ルアー釣りの秘密を明らかにしたい気持ちが強い、というのが、キレイゴトではない、釣りを始めて4か月釣れなかった(笑)、おかむらの本心です。

さらに、機能の確認

──良くわかりました。ではもう少し、機能についての話をさせてください。「④フッキングした時を始め、ルアーの「微妙なアクション」をビジュアル化して表現」はどんなものでしょうか。

今の時点で、下記のようなデータが取れると考えています。

・魚のバイト
・フッキング、魚とのファイト
・ボトムノック、あるいは障害物へのコンタクト
・対水速度(ルアーのスピード)
・ポーズ、ジャークなどのアングラー側のアクション

逆に、例えば泳ぎ姿勢の水平度やウォブルとロールのバランスといったものは、おそらくデータ化しないと思います。

ここで面白いのは、いわゆる前アタリとか、ルアーを追ってきたというような、それこそ微妙な部分がわかるかもしれない、ということです。通常は目で見ないとわかりづらい出来事ですが、もしその時にルアーの動きが変わるようなことがあれば、利用可能なデータにできるかもしれません。

──それは面白そうです。クランクベイトでも、バスは丸呑みしてから吐き出す、という話を聞きます。しかもその間、アングラーは何も感じていない。Model Zeroでは大きすぎるかもしれませんが、もしそれがわかったら大きなヒントになりますね。

ルアーの小型化も、ぜひ進化させたい要素のひとつです。これまで、センサーモジュールの仕様が固まっていなくて、どれくらいの大きさや重さに落ち着くか、見えていなかった。それで、最初のプロダクトであるModel Zeroは、ボディーサイズに余裕があって調整しやすいビッグベイトになった、という流れです。ぜひ、次のステージをお待ちください。いや、みなさんの力で、次のステージに進ませてください。

──その他、⑤以下は、ルアーに加え、スマートフォンアプリ側の機能ですね。

⑤キャストした場所を地図上に表示
⑥場所・気温・晴雨・風・月齢・日時などのデータと統合できる
⑦写真などのデータを釣り人が追加できる
⑧上記のデータをアプリに蓄積できる
⑨上記のデータを他人と共有できる、他人のデータも見られる

はい、GPS情報や気温、月齢、風向きと強さなど、スマートフォン側で外部情報を取り込んで、ルアーが取得したデータと合わせて表示する、というイメージです。

smartLureアプリ その他のデータ表示イメージ

smartLureアプリ、その他のデータ表示イメージ。

今までにない詳細な釣りノートを付けることができる、というイメージでもいいかもしれません。

──どこで何匹釣った、というところまで他人に知られてしまうのですか?

そこはご心配無用です。釣り人がなんでもかんでも共有したいわけではないですよね。そうした具体的な釣果情報ではなく、もう一段上の、先ほど言ったような「法則」的な部分が見えるようなデータが、スマートルアーを使ってくれているみなさんの中で共有できるようになるはずです。

──わかりました。まとめれば、魚探のようにその時の釣りの精度が上がる、というのがひとつ。そしてそれがデータ化され、釣果の情報と結びつくことで、今まで見えなかったものが見えるようになる。それがスマートルアーのメリット、ということですね。

はい。

魚って、変温動物ですよね。そして住んでいる環境は水の中で、ヒトとは、極端に言えば火星よりも違う環境です。まったく違う生き物で、まったく違う環境で生きています。そこで何億年も生きてきた魚のことを知りたいと思ったら、人間の感覚で判断してはだめで、水温ひとつとっても、人間が思う2℃の違いとはまったく異なった変化なわけです。

そんな、魚の秘密を知りたいと思ったら、というのがスマートルアーです。ぜひこの船に乗っていただいて、いっしょに秘密を解き明かす旅に出ましょうよ、というのが今の気持ちです!

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