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釣り針の形と釣れ方の研究|科学的に見たフックのカタチと機能

<編集部より>
川村軍蔵さん(グンゾー先生)の新着考察をお届けします。

今回のテーマは、フックのカタチ。ストレート、オフセット、マスバリといった大きなジャンルだけでなく、太さ、ポイントの方向、ゲイプの幅……等々、多くのバリエーションがあり、また釣り人が自らの理想を細かな差異まで追究している分野です。これを科学的に分析するとどうなるのでしょうか?

またルアーを飲まれてしまった場合の、魚を痛めづらいフックの使い方にも触れられています。ぜひチェックしてみてください。

 

漁業研究者による近年の釣り針の研究の目的は、釣獲率向上だけではなく釣獲魚に与える損傷や混獲の問題である。損傷に関する研究目的の背景はキャッチアンドリリース(C&R)であり、混獲に関しては漁業資源の有効利用である。

代表的な釣り針の形にはJ型針(J-hook)とC型針(Circle hook)がある(図1)。さらに細かく分けるとひねり針、カエシのある針と無い針などがあるが、ここではC型針とJ型針だけを考えたい。

図1 C型針(左)とJ型針(右)

 

C型針は針が大きく曲がって針先が軸に垂直に向かっている針と定義されている。C型針が近年急速に普及して、旧来のJ型針に取って代わりつつあるのは、C型針は顎に掛かるので針を外し易く魚に与える損傷が小さいという理由である。南太平洋の島々で現在でも使われている伝統的な釣針は動物の骨、貝殻や木で作られていて、形はC型である(図2)。貝殻で釣針を作る過程を図3に示した。

図2 ハワイ島の曳き縄釣り用の伝統的釣針

図3 巻貝を使った釣針の製作過程

 

C型針の優秀さを初めて記載したのはイギリス人探検家キャプテン·クックで、 ハワイ島で体験したC型針を1785年出版の彼の航海記で石器時代の極致品と絶賛している(Johannes, 1981)。

その後も幾人かの探検家によって南太平洋諸島のC型針の優秀さが紹介された。私は同様な伝統的な針をパプアニューギニアで見た。鉄製の釣り針を使わない理由を漁師たちに聞くと、鉄製の釣り針より彼らの釣り針の方がよく釣れるのだそうだ。磁化しない非鉄製の釣り針の効能については以前述べたが、C型針の形が釣獲率を高める効果は無視できない。

従来信じられてきたC型針のメリットは Cooke and Suski (2004) によると以下である。

1)咽頭とその奥や鰓にかかる“深掛り”が少ないので針を外しやすく、魚に大きな損傷を与えない。
2)釣獲率が高い。
3)針掛りがいいので“しゃくり”(アワセ。針掛りを確実にするために竿を上下や左右に振る釣り人の操作)が不要。
4)釣り人に安全である。

米国では多くの州でC型針しか使えない遊漁規制があるが、C型針の効能に関してこのように結論的に言うのは実は容易ではない。以下に具体的な例を見てみよう。

ブルーギルの例

魚は種類によって顎の解剖学的構造が異なるので、様々な種類を調べなければならない。さらに釣りのテクニック(針や竿の動かし方,しゃくり)によってもC型針の効能が変わる。例えば、ミミズを餌にしたブルーギル釣りの場合はしゃくりをしないとC型針はJ型針より深掛りは少ないが(図5)、しゃくり次第ではそれが逆転する場合がある(Lennox et al., 2015)。この結果よりLennoxらは、漁業管理において釣り針の種類を規制するだけでは不十分であることを指摘し、釣り方が大切で初心者のしゃくりをしない釣り方を推奨している。

図5 C型針とL型針によるブルーギルの釣れ方(Lennox et al., 2015)。

 

ブルーギル釣りにおいて釣り針の種類による釣れ方の違いを詳細に調べた例がある。Cooke et al. (2003) がオンタリオ州の湖で4種の釣り針(図6)でエサ釣りした釣獲実験では、合計685尾のブルーギルが釣れ、釣獲率には針の種類による差はなかった。また、掛った釣り針の外し易さは釣り針の種類によって変わりはなかった。しかし問題は針掛り部位である。C型針では 眼掛りが22%(他の釣り針の2倍)もあった。C型針では針が大きいほどブルーギルに眼掛りし易い事は分かっているが、その原因は不明で解決策はない (Cooke, et al., 2005) 。ブルーギルの眼掛りは深刻な損傷で、Siewert and Cave (1990) によると、深掛りと眼掛りしたブルーギルの全個体が10日以内に死亡した。

図6 ブルーギル釣獲実験に用いられた4種の釣り針(Cooke et al., 2003)。

 

深掛りしたブルーギルがその後どうなるか興味深い。

Fobert et al. (2009) がQueen’s大学の実験池で行った実験によると、咽頭に深掛りさせた後に、(1)針を外したブループと(2)糸を切って針を咽頭に残したグループ(いずれも出血を伴った)、および針掛りさせなかったグループ(対照魚)を生簀内で10日間観察した。

その結果、10日後の死亡率は対照魚で4%、(1)で44%、(2)で12.5%であった。また、リリースの1時間後に調べた血液成分にはグループによる差はなく、処置によるストレスは1時間後に解消されていたという。

さらに、咽頭に残した針の71.4% が10日以内に吐き出されていた。咽頭に針を残したままの(2)のグループは 、48時間後には対照魚と同じように摂食した。

つまり、深掛りした針を無理に外す必要はないことは明らかである。深掛りした釣り針がどのように外れるか興味があるが、外れる過程を観察した例はないようである。著者らはこの実験結果に満足している訳ではない。深掛りして短期間中に死亡した魚は血液検査や摂食実験の対象にならなかったことから実験は不十分であったと述べている。

ラージマウスバスの例

ラージマウスバスの場合はC型針の効果は判然としない。

Cooke et al. (2003) がイリノイ大学の実験池で行った釣獲実験では、釣獲尾数はC型針で125尾、J型針で134尾であったが、C型針のアタリの頻度に対する釣獲率はJ型針の半分であった。つまり、アタリがあってもC型針では釣りにくい。

J型針では深掛りがC型針より多く死亡率は若干高かった。これらの結果から、ラージマウスバス釣りに関してはC型針は万能ではないと彼らは結論している。

また、ラージマウスバスでは針掛りの後遺症が長期間調べられている。Fobert et al. (2009) はバスに4種類の異なる深針がかりをさせた:針を外さず付けたまま、通常の針外し、カエシの無い針の外し、鰓弓に針を刺した。そして、これらの処置をした魚と、顎に軽く針を刺して外した魚(対照)と比較した。これらの処置日の死亡率は11% であったが、処置による違いはなかった。5日間の水槽内観察では、 処置バスの摂食量は対照バスより少なかったが、その他の違いはなかった。11ヶ月間の池での観察では、処置魚と対照魚の摂食量、成長、生残率に何ら違いは認められなかった。

海産魚の例

海産魚は種類が多いので、C型針の評価は一様ではない。

インド洋のマグロ延縄(浅縄)を調べたKumar et al. (2013) の報告では、マグロ類の釣獲率はC型針でJ型針より遥かに高く、深掛りはJ型針は45%であったがC型針では皆無であった。特筆すべき事項として、彼らはC型針では鮫類が掛らないので、鮫類の保護にC型針が有効であるとしている。しかし、南アフリカ沖のマグロ延縄の調査を行ったPeterson et al. (2008) は鮫類の釣獲尾数がC型針で243、J型針で131であったことを報告しており、南西インド洋でマグロ延縄漁を調査したAriz et al. (2005) は鮫類の釣獲率はC型針の方がJ型針より高かったと報告している。

大西洋北西部海域で行ったバージニア大学海洋科学研究所のKerstetter and Graves (2006) の調査(操業数131回)は魚種ごとの差が明確である。

概ね C型針による釣獲率はJ型針よりマグロ類で高くカジキ類で低い傾向にあった。エイ類の釣獲率はJ型針の方が、シイラの釣獲率はC型針の方が顕著に高かった。針掛り位置はC型針で深掛りが少ない傾向にあったがJ型針との差は小さく、キハダだけはC型針の深掛りが顕著に少なかった。規制体長以下の釣獲魚は放流が義務付けられているので、C型針の使用は漁業管理方策として有効であると結論している。

彼らの調査で興味深いのは、枝縄に張力計を装着して釣獲時刻を記録したことである。合計559個の有効記録(枝縄の水中浸漬時間は13時間−18時間半)から次のことが分かった:カジキ類の99%と全メバチ(17尾)さらに全ビンナガ(7尾)が夜間(深夜を含む)に掛り、キハダでは昼夜の差がなかった。一方、シイラの95%が昼間掛った。私は延縄の釣獲はまずめ時に起こると思っていたが、実際の調査結果は全く違っていた。

オーストラリア東海域で行ったWard et al. (2009) のマグロ延縄漁でC型針とJ型針を比較した76回の試験操業では、混獲魚も含めた全魚種の釣獲率(尾⁄釣針千本)はC型針で15.66、J型針で13.24であった。特にキハダ、ビンナガ、マカジキでC型針の効果が著しかった。しかし、メバチ、カツオ、シイラでは釣獲率に差がなかった。針掛り部位は殆どの魚が喉掛りで、2種の釣針に差がなかった。

シャム湾における一本釣り試験操業を行ったPaighambari and Eighani (2007)の試験結果はC型針に否定的である。彼らはJ型針とC型針を使って生餌(イカの切り身)と人工餌(イカに似せたプラスチックルアー)で、1306尾の釣獲魚(主にイケカツオの類)の釣獲率(kg⁄釣り針数⁄時間)を比較した結果、J型針+生餌 0.977;J型針+人工餌 0.777;C型針+生餌 0.569;C型針+人工餌 0.411であった。

フロリダ半島沖合で瀬魚一本釣り調査を行ったSauls and Ayala (2012) の報告は 調査船と雇用釣り船の合計166航海の 調査結果で、釣られた7種類の魚において、1)深掛り:C型針はJ型針より30%-90%減少させた、2)サイズ選択性:C型針では規制体長以下の小形魚は釣れないという証拠は得られなかった 。メキシコ湾のアメリカ側水域では、瀬魚釣りにはC型針だけを使うよう規制されていて、C&Rの場合には有効な規制と見なせる。しかし、実際にはC&Rは行われていない(釣り人による漁獲水揚げ量は漁業者による漁獲水揚げ量を越える)ので、この規制が漁業管理にどれだけ有効であるかSauls and Ayalaは疑問視している。釣り客が多い大きな釣り船ではC型針を無料配布しても釣り人たちはそれを使わず自分が持ち込んだ釣り針を使うのだそうだ。

アメリカ南東大陸棚海域で行ったBacheler and Buckel (2004) のハタ類竿釣り(20航海、5種類のハタ類、釣獲数593尾)の調査によると、1)C型針とJ型針の間で釣れた魚のサイズと釣獲率には差がなかった、2)深掛りは圧倒的にJ型針で多く、従って出血が多かった。この調査海域の漁業管理策として総量(尾数)規制、サイズ規制、漁期規制、禁漁区設定がされている。規制体長以下の小さいハタ類は放流が義務づけられている。また、規制尾数に達した後に釣れたハタ類を放流すれば釣りを続けることができる。低層から釣り上げられたハタ類は胃の突出や浮き袋の損傷などのため放流後の生残は危うい。深い漁場での禁漁区設定やC型針の採用はハタ類の無用な消耗を防ぐために漁業管理には有効な手段であるが、監視が困難である。これらの事からBacheler and Buckelはこの海域における漁業管理の現状に悲観的である。

海亀の例

マグロ延縄操業漁における海亀の混獲は深刻な問題である。

しかし、近年、マグロ用の釣り針をC型に換えることによって、混獲をオサガメでは86%、タイマイでは90% 減らすことに成功している (FAO, 2010) 。海亀の混獲が減少してもマグロの漁獲量が減ったのではマグロ延縄漁が成り立たない。その問題を、南西大西洋で操業したブラジル延縄船を調査しSales et al. (2010) の報告で見てみる。調査中、229回の操業で200匹の海亀(アカウミガメ85%、オサガメ14%、アオウミガメ2匹)が混獲された。オサガメの混獲があったのは86回の操業で、その内1回の操業で2匹混獲されたのは21回で、5匹や9匹の場合もあり、最大16匹の場合もあった。

混獲率(釣り針千本当たりの海亀が掛った匹数)を見るとアカウミガメではJ型針で1.605、C型針で0.727。オサガメではJ型針で0.274、C型針で0.096。両者の釣り針の間で2~3倍の差があった。調査水域のブラジル漁船は、太平洋やインド洋で操業する漁船より、延縄投入水深が浅いので、この調査で専らオサガメが掛ったのはオサガメの分布水深が浅いためであろう。

C型針の効果をまとめると次のようになる:1)混獲率の減少,2)深掛りの減少、3)釣り針が掛ったままの海亀の放流の減少(J型針は深掛りが多かったのでハリスを切って釣り針が掛ったままの海亀を放流した)。

マグロ・カジキ類(メバチ、キハダ、ビンナガ、メカジキ)の漁獲量を見てみると、C型針でメカジキは顕著に漁獲が多かった(J型針の1.2倍)がマグロ類とシイラでは少し高い程度であった。

この海域でメカジキの漁獲率がなぜJ型針よりC型針で高いのか原因不明である。ハワイ海域の調査報告でもカジキ類のC型針による漁獲率が高かった。しかし、餌(サバ、イカ)は同じであるが他の海域の調査結果は逆である。地中海やオーストラリア海域ではカジキ類のC型針による漁獲率はJ型針より低いと報告されている。北大西洋での調査ではカジキ類のC型針の漁獲高はJ型針より重量で25%も低かった(Watson et al. (2005)。

結論として、南西大西洋のマグロ延縄漁でC型針を使う事はブラジルの海岸で産卵するオサガメとアカウミガメの保護に有効であることは疑いない。

参考文献

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魚、そして釣りを研究してもう何十年と経ちます。 私自身も釣り好きで、GTをおびき寄せる音を開発したけれど、「それはつまらん」と言われてお蔵入りになったことも(笑)。「魚の行動習性を利用する 釣り入門」の著者です。 魚の生態を釣りに活かすことで釣りをもっと楽しみたいと考えています。

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